黄昏の百合の骨 (講談社文庫)
恩田 陸 講談社 講談社
黒い理瀬がいい
「三月は深き紅の淵を」から始まった水野理瀬(を中心とした)シリーズの一作。時系列としては「麦の海に沈む果実」の続編にあたる作品です。
前作で自分の目標に目覚めた理瀬が、その後のイギリス留学から戻って長崎の古い洋館で暮らしながら、その家に隠された秘密について探っていくのが主なストーリー。洋館の謎に、魔女のような叔母2人に、美しい青年のいとこ2人、ひとくせある理瀬の友人たち(と既に亡くなっている祖母)が主な登場人物で、もちろん殺人事件つき。
前作の結末で出自が(半分くらい)明らかになり覚醒した理瀬は、高校生ながら闇の部分をいかんなく発揮する一方、年相応の感傷も時には顔をのぞかせます。お互いの心の裏を読みつつ、祖母が残した館の謎を解き、殺人事件の真相も明らかにしていく過程は、ドロドロしていて期待を裏切りません。
初読者向けではないですが、「麦の海〜」だけでも読んでいれば十二分に楽しく、物語の世界にどっぷりと浸かって幸せな時間を過ごせます。
これはヤバい
恩田陸の真骨頂といえます
上辺はかわいい女の子とかっこいい男の子達が出てきて
美しい光景と郷愁が支配する恩田陸ワールドですが、
中をのぞいてみると圧倒的なほど暗くドロドロした世界が
広がっています。
また、でてくる女性も少女もあどけなさを残しているのに
大人の女性のしたたかさを持っている。それは主人公も
例外ではありません。
善は悪をひきたてる存在という言葉は前作の少女から女性に
成長した理瀬らしく、また現実世界にも通じる言葉だと思い
ました。
こんなにも幻想的なのに物語の端々に深く現実が横たわり、
悪意が渦巻いている。なのに、それを美しいと思ってしまいました。
この読後感は読んだ者にしかわからない。
ああ、だめだ。しばらく恩田ワールドからぬけれそうにありません。
余韻を引く
「麦の海に沈む果実」の続編「黄昏の百合の骨」、タイトルからして魅力的。
読んでると、静かにその世界に沈んでいくような、不気味な魅力に没頭してしまう。
祖母の遺言により、白百合荘に帰ってきた理瀬。2人の叔母と暮らし高校に通う。
祖母の遺言の謎、死の謎、失踪の謎、百合の謎・・・
一文字一文字しっかり読んで自分なりに推理したけど、”最後まで気が抜けないな!”
というのが感想。本当、気が抜けない!
今、読もうか迷ってるなら、肌寒くなった秋口に読むのがお勧め。この世界観とピッタリだと思うから。
ああ、こういう世界観の本は余韻に浸ってるのも心地いい。
次の本になかなか進めない幸せ!いいねいいね。
ちょっと怖いかも
恩田さんの作品が大好きで、ほとんどの小説は読みました。
この作品は「麦の海に沈む果実」の続編です。そして理瀬が黒くなってます。もっと純粋な美少女なイメージを持ってたので少しショックでした。
作品としてはとてもおもしろかったです。ただ少し怖い、背筋がゾクッとくるところがあるので、ちょうど今の季節にはもってこいかもしれませんね。ただ、この作品を読む前に必ず前作「麦の海に沈む果実」を読んでからでないとおもしろさが半減します。
外見では人は判断できないな
初めてこの作家の小説を読みました。
読んでみたいなとは思っていたけど、ちょっと二の足踏むところもあって。
これは評判が良かったので 読みました。
女性作家らしく 女性の本質というか 怖い部分を見事引き出していましたね。
ひたすら隠そうとしているものとは なんぞや・・・。
百合じゃなきゃだめな 何かが・・・・。 面白かったです。
きのうの世界
恩田 陸 講談社 講談社
結末がひどい
この作品は、水路と3つの塔が印象的なM町を訪れてそこで生活し始めた市川吾郎という男が何の目的でこの町を訪れ、そして殺されてしまったのかという謎をメインに話が展開していく。
内容はこの町に住んでいる人物の事件のかかわりや「あなた」と呼ばれる人間が市川吾郎が東京から突然失踪し、M町で殺されてしまった理由を調べにやってくる描写が描かれ、次第にこの町の本当の姿や事件の真相が明らかになっていく。
私は話の中盤辺りまでは、非常に楽しく読めたが、終盤に明らかになるM町の秘密が明らかになったところからつまらなく感じ出してしまった。M町の秘密はそれほど衝撃な内容ではなかった。
そして一番がっかりしたのは、市川吾郎という人物が殺された水無月橋の殺人事件の真相があまりにも現実離れし過ぎていたことである。この作品は中盤までは現実的な話だったが、終盤からSF、ファンタジー色がかなり濃くなりリアリティが無くなる。したがって推理小説を期待して読む人には絶対にお勧めできない。かなり結末がいい加減なので、ミステリ好きは必ずと言っていいほど、読んでがっかりするだろう。
個人的意見としては、恩田陸ファン以外の人はあまり楽しめないのではないかと思う。
この気だるさがたまらない。
読んでいて漂ってくる脱力感、意味不明な気だるさが常に恩田氏の著作には付きまとう。けれど、この感覚が著者の特徴であり、ファンである読者にとっては快感なのだと思う。この心地良さを求めて、また読んでしまった。
今回はかなりの長編だった。次回作も長編だとうれしくなる。
やや難解でいわゆる「推理小説」にないジャンル。好き嫌いが分かれるのでは?
冒頭の第一章から、かなり特徴がある。ある町の風景を、通常の小説のように鳥瞰図のように客観的に説明するのではなく、訪れた人物の目線を追う形で語る。これが、個人的には非常に読みづらかった。もちろん、この部分は物語の重要な部分なので、しっかりと読まなければならないのだが、ここで、なんだか、不思議な感覚に襲われる。更に、語り手がどんどん変わり、しかも、超常現象的なテーマも含まれ、物語はどんどん拡散してゆくような印象を与える。いわゆる「殺人」「謎解き」というつくりではなく、謎は舞台となる町の存在自体へと拡大してゆく。
後半、一気にすべてが展開し、最後にすべてが明らかになるが、謎解きの部分はスッキリと腑に落ちる、という感じではなく、読んだあとの爽快感もない。事件が終わったあとに、何が残るのかというと、何も残っていないようにも感じられる。
作者の引き出しの多さがよくわかる。ただ、よくできてはいるけれど、好き嫌いが分かれる作品ではある。
人間嫌いのファンタジー
500ページ近い長い話を一気に読まされた.その点では大変な迫力である.しかし,では何を読まされたのか ? この話の主人公は人間ではなく,M という名の町なのだ.この町には恐ろしい秘密が隠されていて,それが何でどう働くのか,が話のテーマなのだ.異常な才能を持った東京の会社員はこの町の秘密を見抜いたらしいが,どう働くかを見ることなく死体になってしまう.この会社員がこの町でなぜ殺されたのかを調べに東京からきた あなた (二人称) はどう働くかを見たがそこで寿命が尽き,生きて東京に帰ることはない.以上の二人を含め,多数の人物が登場するが,作者は誰にも同情的でなく,従って読者として感情移入の対象になる人がない.ひたすら荒唐無稽な舞台装置を嘆賞するだけ.だから何を読んだのか納得が行かないのだ,と思う.ファンタジーとしても,人間の働きかけを拒むファンタジーは何とも空しいものだ,と言わざるを得ない.
アナザー イエスタデイ
恩田陸久々の長編ミステリ。
全19章、500ページ近くと、氏の作品群の中でも
最長編に近い一冊、ゆっくり腰を据えて読んでください。
ストーリーに関しては他のレビュアーの方が的確なレビューを書いてくれているので、そちらを参考にしてください。
突然失踪した男、その死体、閉じられた田舎の町、謎の塔。
これぞミステリーといわんばかりのキーワード、作者らしいです。
ネタバレではありませんが、本作の特徴として、作品の大部分が珍しい「二人称」で構成されています。氏としては代表的なものは「象と耳鳴り」の「往復書簡」くらいじゃないかなぁ。
具体的には二人称の章、三人称に章を交互に繰り返し、謎に追いかけます。
二人称で「あなたは」と話しかけられている間は、その話しかけられている人物は、物語後半になるまで明かされません。
まるで自分が探偵として物語に参加しているようでした。
登場人物が出揃う後半からは一転、諸処の人物が入り乱れ、三人称のみで加速度的に謎に迫ります。
「禁じられた楽園」のような雰囲気もありましたが、SFやファンタジー要素はなく、なるほどきのうの世界、久々の純粋(?)なミステリーです。
ちなみにちゃんと着地しているので、近年の氏の作品に閉口している方も、
一見の価値はあるはずです。傑作でした。
タイトルにも拝借した洋題もオシャレで、なるほどと思わされる。
映像化はムリそうですが、そのタイトルでもいいですね。
ところで本作は新聞紙上で一年半ほど連載されていたそうだが、
紙上で追いかけられた読者はいるのだろうかと思ってしまった。
それくらい、時間軸も飛ぶ上に、長いので…
「例えば、印刷したチラシならば躊躇することなく丸めて捨てられる。しかし、これが肉筆の手紙だったらどうだろう?(中略)肉筆で書かれたものを捨てることには抵抗がある。それはきっと、書いた文字もその人の一部だからだ。」 本文265ページより
蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫 お 48-5)
恩田 陸 集英社 集英社
う〜ん
古き日本やそこに住む人々、常野と呼ばれる不思議な一族を、一人の少女の目を
通して描いている作品です。
著者の恩田さんは作品ごとにタッチが変わり、多彩な作風でいつも驚かさせられて
いるのですが、この作品は独白調で描かれており、言葉遣いも独特でまた違った新
鮮さがあると思います。
しかしその新鮮さというのは「恩田作品」に限定した場合の話しであり、読み出して
すぐにカズオイシグロ氏の作品の影響を感じずにはいられませんでした。
恩田さんは間違いなく優れた作家さんではありますが、少女が持つ微妙な心の揺れを
表現するという点では、残念ながらカズオイシグロ氏には引けを取っており、同じよ
うな作風のこの本は、正直、物足りなさを感じます。
この先、恩田さんならもっと書けるはず! という期待も込めてキビシめに☆2つに
しました。
宝石のように美しくも大切な想い出と、後味の悪さ
本書は『光の帝国』に続く「常野物語」シリーズ第2弾だが、前作の続きではなくシリーズの番外編といった方がよいかも知れない。
本書に登場する春田一家は、『光の帝国』に登場する春田一家のおそらくは二代か三代前の先祖と思われるが、彼らの能力もまた、『光の帝国』の春田一家と同様、「しまう」ことにある。
しかし本書の中では、一家の末息子である光比古の役割は重要ではあるものの、彼らはあくまでも脇役であり、物語の中心は語り手である峰子と、彼女の想い出の中心にほのかに輝く「聡子様」である。
峰子が「聡子様」と過ごした幼き日々は、彼女自身が述べるように、彼女が最も幸せだった時代である。
その彼女の記憶に語られる日々の出来事は、どれをとっても懐かしくも優しく、ときには悲しみや切なさを伴いつつも、いつまでもその至福のときが終わらなければいいのにと、そんなはかない願いがストレートに伝わってくる。
しかし、その優しい想い出のままで物語が終わればいいのだが、読後に残る思いは後味の悪さばかりである。
ラストでは峰子の現在である終戦直後に時が戻り、すっかり生きる気力を失い、途方に暮れてしまっている現実が映し出される。
締め括りの「彼らが、そして私たちが、これからこの国を作っていくことができるのか、それだけの価値のある国なのかどうかを彼(光比古)に尋ねてみたいのです。」との述懐は、単に峰子が置かれた終戦直後の暗い絶望的な状況に対する問いかけというよりも、むしろ現在の先行きの見えない日本に対しての、作者が峰子の言葉に託した読者へのメッセージではないかと思う。
しかし、その答えを、その救いを、作者自身に示して欲しかった。
あの救いようのない絶望的な物語である『光の帝国』においてさえ、救いを与えてくれた作者なのだから。
不安な時代への警句と希望
常野一族という一風変わった一族がいる。
『光の帝国』で、春田の血筋の書見台が一族ではない家に所蔵されていたとちらりと出てきた。
その書見台を有していた旧家と集落を中心に、19世紀末の「にゅう・せんちゅりぃ」を迎えようとする日本が牧歌的に描かれている。
だが、その新しい世紀が戦争の世紀であったことは、現代の読み手にとっては既知であり、描かれる世界が美しいほどに喪失の予感で胸が痛む。
「しまう」「響く」ことは特別でも、本を読み、人と触れあい、気持ちを揺れ動かすことなら、誰しも日常的にしていることだろう。
そうやって他者を感じながら、一人一人が、今、この時、この国を作っている。主人公の最後の問いかけは、読み手への問いかけであり、警句である。
不思議であると同時に美しい、静かに胸を打つ本だった。
聡子は日本の良心
時代は「にゅう・せんちゅりぃ」(21世紀ではありません。20世紀です)を迎えた頃、場所は山を越えれば福島、という阿武隈川沿いの農村地帯。絵に書いたような田園風景が目に浮かびます。大地主の末娘・聡子の話し相手としてお屋敷に上がることになった峰子の日記がタイトルの『蒲公英草紙』です。彼女が自分の日記になぜこの名前を付けたのか、何となくわかる気がします。うららかな春の午後、窓辺から黄色い蒲公英に紋白蝶が戯れている様子を窓辺から眺めていて思いついたようです。
父親から帳面をもらった峰子は「しっかりお勉強をして世の中の役に立つ人間になりたい」と考えます。からだが弱く、成人するまでは生きられないだろうと言われていた聡子は、畑仕事を手伝う子供たちを見て「みんなあんなに働いているのに、聡子は何もしてないね」「聡子はぬくぬくとわがままをさせてもらっているのに、何も村に返してません」と言います。これから大人の階段を上ろうかという年頃の少女たちでも、普通にこんなことを考えられていた時代があったんでしょうね。家族のためとか、地域のためとか、国のためとか、とにかく自分のことだけを考えるのではなくて、誰かのために役に立つ人間になりなさいと親は子に教え、子はその教え通りに何か人の役に立つことをしようと思う、美しい日本人がたくさんいたんですね。
聡子を見ていると、育ちがいいというのはまさに彼女のためにある言葉だと思います。美しい言葉遣い、周りの人への気遣い、感謝。清々しい心の持ち主は、周りにいる人の心まで暖かくさせる。そこにいるだけで心を和ませることのできる人。聡子を取り巻く人々も優しさにあふれていて、せわしない日本にも、かつてはこんな風に平和でゆったりと時間が流れていた時代があったんだなと、読んでいる私まで穏やかな気持ちになりました。
だからこそ、村をおそった悲劇がひどくつらいものになるのですが、ここでみんなの気持ちを救うのが、常野一族の春田一家です。『光の帝国』の一話にもつながりのあるような家族が出てきましたが、みんなを「しまう」ことのできる彼らと村人たちとの交流は短くも心に残るものでした。
最後は昭和20年8月15日。玉音放送を聴いた峰子は深い喪失感の中にいますが、だからこそよけいに聡子のとの楽しい日々に心を引き戻されてしまうんでしょう。平和な物語のラストとしてはちょっと切ない終わり方なんですが、だからこそ聡子の美しさが引き立っているような気がします。「自分が幸せであった時期は、その時には分かりません。」深い言葉ですね。
小さな世界の中の至極の思い出
前作「光の帝国」は、さまざまな能力を持つ常野の人々の全体像と彼らの引き寄せられる役割、そして時のさまを描いたいたのに対し、「蒲公英草紙」は常野の人々ではない一人の女性の少女時代の回想として、思い出深い常野の人々が語られています。語りは一人称ですし、少女だった頃の視点から語られているので、今と違って、情報の量も少ないですし、子供に何もかもが筒抜けではないためでしょうか…情報の中の怖いものや大人の事情はあいまいで優しい世界になり、小さな世界の中の至極の思い出がまばゆく輝いています。
「蒲公英草紙」に登場する常野の人々の中には、「光の帝国」の「大きな引き出し」に登場する春田一族の祖先がいます。彼らは膨大な知識や人そのものを「しまう」、そして時には「響かせる」役割を持ち、旅をしながら暮らしています。今回、常野の人々の視点から物語が語られないのは、彼らが主役であろうとしないからではないかと思っています。彼らは代々為すべきことを為すために行動し、優れた力を持ちながら表舞台に出ようとはせず、目立たぬようにけれども世界のありようを支えている人々だからです。…代々為すべきことがはっきりしているというのは、制限でもあるけれど、幸せなことなのではないかとも思います。不思議と常野の人々にはその定めに逆らうものが今のところいないので、何かの定めによって定められているかのように時には自己を犠牲にしてまで、何かを守ろうとしています。その一方で、語り手である峰子が出会う聡子は、春田一族とは異なり、常野のことをよく知らないままその能力を知らず発揮しています。聡子は祖母から聞いたわずかな常野についての知識を物語だと認識していましたから、春田一族のように知識の伝達や教育を受けていないのです。それでも彼女は少し遠くのことが見える力で自らの為すことを為そうとするのですが、春田一族の成長過程と比べて、真っ暗な道をひとりで進んでいかなければならないという周囲のサポートの少ない仕事であったといえます。それを思うとせつなくなると同時に、語り手である聡子の話し相手である峰子とのたわいない少女同士の夢やおしゃべりがどんなに聡子の支えとなっていたのかがよくわかります。峰子は聡子を理解していたわけではありませんが、聡子の小さな世界と見えるだけの外の世界をつなぐ人物としていつも沿い、かけがえのない媒介者であったと思います。それから、ラストに峰子が数十年を経てなぜ今回想に至っているのか、が語られているのですが、厳しい中にもわたしにはどこか長期的な希望のかけらが感じられました。それは峰子の代なのかも知れないし、もっと先のまだ生まれていない人々の代なのかもしれませんが…常野の人々を知ると物事を大きなスパンで見られるようになるような気がします。
ユージニア (角川文庫 お 48-2)
恩田 陸 角川グループパブリッシング 角川グループパブリッシング
2回読んだ
1回目の読みでは、何が何だか分からないままに終わっていた。
読み返してみて、自分が誤解していた部分が理解できた。
でも、過去の話を振り返ることの繰り返しからは、真相は見えてこない。
美しかった過去が現実に打ちのめされている感じだ。
二重写しされた過去と、故意に歪曲されている過去が繰り広げるだましあいのせめぎ合いなのだろう。
この書き分け方がすごい
本の内容はほかの方のレビューや内容紹介で十分だと思うので割愛。
この作品のすごいところは、書き分けだと思います。
章ごとに主人公(語り手)が変わります。
だから、あまり本を読まない人はわけがわからずこんがらがるかも。
と、ある大量殺人事件を軸に、その事件へかかわった人間たちがインタビューされているというような形式もあれば、彼ら彼女らが、ただ語っているという章もあるので、深く読まれることをオススメします。
なんていうか、本当に書き分けがすごいなあと思います。
1冊の本に、こんなにもたくさんの人の視点から1つの事件について書く(しかも著書は1人)なんて、頭の中でこんがらないのかなあと思うくらい。
旅のお供にと、文庫を購入してしまった私は魅せられたのかもしれません。
それぞれの「真実」のあわいに立ち上がる「虚構の迷宮」
芥川龍之介「藪の中」を彷彿とさせるオープンエンドなリドルストーリー。
とはいっても、作中において大量毒殺事件は実際に起き、
実行犯は特定される、という事実自体はブレません。
真犯人が誰であるかだけが、最後まで明かされないのですが、丹念に読み込めば、
おそらく、この人ではないか、という当たりはつけることができます。
ただ、本作の読みどころは、おそらく、そうしたフーダニット興味にあるのではなく、
後年になって、関係者それぞれの視点から語られた事件の「真実」が集められることで
形作られていく、虚構の迷宮とでも呼ぶべきものの佇まい自体を味わうことにあると思います。
一人の人間が把握できる事実などは、ごく限られて
いますし、時が経つにつれ、したいに忘却していきます。
そして、後になって、いざそのことを語ろうとする際、改変・改竄された
「真実」には、色濃く自己の願望が反映されたものになっているのです。
よって、ミステリでよく見られる超人的な犯人による巧緻な《操り》なども現象に
整然とした意味と構図を求めてしまう現代人の願望に過ぎず、現実はそんなに
単純でも透明でもありません。
「真実」が人の数だけあるというなら、たとえ自分の理解が及ばなくても、
相手を思いやり、寛容の精神を持って接していくべきなのに、異端者を排除し、
わかりやすく、自分にとって心地よい「解決」に飛びついてしまう――。
本作は、そんな人間の哀しい業を描いているといえます。
面白いが・・
文章自体はとても面白く次々とページをめくりあっという間に後半まで読み進めてしまいました
・・が結局謎は解決されず です
はっきりとした答えを期待した私の評価は星3つとさせていただきます
気分が重くなる・・・。
30年前に起きた名家の大量毒殺事件の真相をめぐって当時事件に関わった人たちがインタビューに答えるような形で綴られていきます。 ドキュメンタリー方式とでもいうんでしょうか?
真の犯人がわからないまま終わってしまうというのが、賛否両論ですが、ほぼ犯人が断定できる内容です。 真犯人はあの人で間違いないんですよねぇ?
私にとってはテーマが重いためか、続きが気になってどんどん読み進めるって感じの作品ではなかったです。 途中で何度か挫折しそうになりました。
麦の海に沈む果実 (講談社文庫)
恩田 陸 講談社 講談社
時季外れの転入生。
再読でも楽しめます。
次々と起こる展開に目が離せません。
めまぐるしいので
ついていくのが大変かも?
それでも最後まで読ませてしまう作品なので大変
魅力的だと思います。
雰囲気は最高!
まさに恩田陸の世界!
幻想的・神秘的な雰囲気が漂う湿原の中の学校……
その学校に“三月以外にやって来た転校生”水野理瀬と、学園生活を共にするどこか謎めいた仲間達……
幻想的な舞台、謎が謎を呼ぶ展開に加えて、淡く切ない雰囲気も併せ持っていて、読んでいてどんどん惹きこまれていきます。
多くの方がご指摘なさっているように、ややオチが物足りないという気もしますが、終盤に至るまでは文句なしに身震いするような面白さです。
何といっても、この作品の最大の魅力は世界観・雰囲気。
それを是非とも味わっていただきたいです。
恩田陸の作品の中でも、作品が醸しだす雰囲気は最高級だと思います。
この作品を読了した後は、「睡蓮」(「図書館の海」収録)、「黄昏の百合の骨」、「回転木馬」(「三月は深き紅の淵に」収録)も読まれることをオススメします。
恩田陸を大好きになった作品です。
初めて読んだ恩田陸さんの作品でした。
これにより、恩田さんの書く学園の世界観が大好きになりました。
現実より、少年たちの世界が少し素敵に、そして粋に修正されています。その修正が嫌みでなく「小説で描く世界観はリアルならいいってもんじゃないのだな」と再認識させられました。
また、文章が丁寧に丁寧に作られているように感じ、好感が持てます。(あのボクトツとした著者近影のせいでそう思うのかも)
特に、ヨハンには魅了されました。
学園ものが苦手な人にもぜひ読んでみてもらいたい作品です。
ラストは・・・・・
魅力的なタイトルと装丁に惹かれて読んでみました。
主人公の水野理瀬にはかなり感情移入できます。
物語全体に渡って漂う不穏な雰囲気もたまりません!
「三月は深き紅の淵を」とか「黒と茶の幻想」もそうですがかなり余韻に浸れます。
でも終盤に全てを悟った主人公が豹変する所はショックを受けるひともいるかも。
まあこのシリーズはまだまだ完結していないので主人公が最終的にどうなるかは興味深い。
幻想的な雰囲気の小説が好きな人は楽しめると思います。
また読みたくなる、この世界に浸りたくなる。
タイトルと、カバーイラストがこの本の魅力をそのまま現してると思います。
妙な感じ、静かな感じ、背筋が寒くなるような・・・
本当に面白かった!内容を知った上でまた読みたい!と思わせる一冊だと思いますよ^^
これぞ、恩田陸。
夏の名残りの薔薇 (文春文庫 お 42-2)
恩田 陸 文藝春秋 文藝春秋
意味がわかりません
各章ごとに、登場人物の一人の視線で展開する緊張感のあるストーリーがとてもいい。しかし、ちょいちょい出てくる映画かなんかの引用文はかなりうざったく感じられた。そして、各章で展開しているストーリーは矛盾している。これら各章で矛盾したストーリーたちをどのように収束させていくのか?各章のストーリーが魅力的なだけに、最終章への期待が大きかったのだが・・・。
映画の話とリンクさせているのだろうが、到底納得できない終わり方だ。何も収束していない、散らかしっぱなしの印象。混乱したままで終わるのもいいかなと思われる方にはいいかも知れません。
自分はこういう作品が苦手です
人は嘘をつく。
このことを前提にしないと成り立たない作品なのかもしれない。
それぞれの言い分のどこまでが真実なのかということなのかもしれないけれども、自分はこういう作品が苦手だ。
きちんとした終末を迎えたいと思ってしまうのだ。
ここはいつでも悪意に満ちているんだもの
恩田陸には珍しいミステリ小説。
物語の舞台は年季の入ったホテル。
そこでは毎年沢渡の三姉妹によるパーティが開催されていた。姉妹の招待された客たちはそれぞれ嫌なウワサがあり、張りつめた関係だった。だがパーティの最中に殺人が行われる。これは本当に現実なのだろうか・・・?
読んでみて、思わず「うっ」と軽い抵抗を感じました。
しょっぱなに登場する美貌の姉弟は禁断の仲であるという設定からヘビィだなと思いました。そして全部読み終わるとまるで秘密の花園(笑)を見てしまったような気分になります。
また、本作は第1変奏から第6変奏の6つに構成されており、変奏ごとに人物の視点が変わって相関も変わるという構成は良くできている。
とにかく全編に渡ってただようディープな雰囲気が印象的な小説だ。
『夜のピクニック』や『ネバーランド』で恩田陸に惹かれてこの本を読もうとすると、面を食らうかもしれない。童話的な語り口と演出が特徴で、そこからシビアな人間関係が浮き彫りとなってストーリーの濃さがにじみ出ている。
清々しい恩田陸を望むのだったら心して読んだ方がイイ。
でも私はこの読後の不思議な虚脱感は嫌いじゃない。
人の記憶、妄想と現実
本格ミステリマスターズ、待望の文庫化。
恩田陸にしては珍しい、耽美的な雰囲気を前面に押し出した作品。
同じ文春から出された「まひるの月を追いかけて」も作風は本作とは異なるが、
氏の本流からは少しずれている2作品として捉えられる。
恩田陸は非常にオマージュが好きな作家だが、今作ほど強烈に、大胆に取り入れた作品は無い。ふんだんに「元」が引用されている。
アラン・レネ監督映画『去年マリエンバートで』が今作のオマージュ作品で、引用文が繰り返し繰り返し本文に登場する。
さて、この小説は「人の記憶、妄想と現実」がテーマであると思われる。各章毎に殺人事件が起こるのだが、次の章では記憶がキャンセルされ前章で死んだ人物は蘇っている、というような表現がなされる。
しかし…これは記憶が違っているのか、忘れているのか、現実なのか、妄想なのか。そういう境が曖昧になって…
ところで、この小説は各章を「第〜変奏」としているが、上手いなぁと何章か進んで思った。変奏曲とは主題といくつかの変奏からなる楽曲の事で、今作では基盤となる主題を用意し、各変奏で内容を変えていく、という風に表現している。
人物の名付き台詞の挿入など「中庭の出来事」に非常に近いものを感じ、あちらの方がより込み入っていて年月を感じた。今作は「登場人物の記憶〜」がテーマで、あちらは「読者の記憶」にテーマが置かれているのだろうから、作風を含めて受け取り方は全く違うのだが。
「チョコレートコスモス」「中庭〜」「猫と針」へと繋がる一冊です。
また、巻末に収録されているスペシャルインタビュも魅力的。特にオープンエンドに関する著者談はなるほどなと思わされます。
「生きていると思っているうちに、死んでいるのではないか。まだ世界は存在すると思っているうちに、終わっているのではないか。そのことに気付かない私が、幽霊となってこの世の果てのホテルの部屋でじっと窓の外の雪を眺めているだけなのではないか―」 本文209ページより
不連続の世界
恩田 陸 幻冬舎 幻冬舎
「不連続の世界」
純粋におもしろいです。恩田さんの作品は1つの場所で展開する話が多いのですが、今回は様々な場所で展開されるまさにトラベルミステリーでした。
(注)ちなみに本書の一篇「砂丘ピクニック」に登場する楠巴さんは「中庭の出来事」にも登場しています。
恩田陸の魅力が出ている一冊
恩田陸の短編集!って感じです。
恩田さんのファンとして、とても楽しめました。
ホラーっぽくても最後にどこか救いのある、完全に地獄に落としきらない優しさがあって、それが恩田陸の好きなところです。(人によってはそれがぬるく感じるのかな?)
タイトルの不連続の世界ってのはあまりピンとこなかったですが、作品により書いた時期に10年くらい開きがあるそうなので、時代背景のずれ方がリアルでむしろ良かったです。それが不連続感につながっていたかも。
初めて恩田陸を読む方にもおすすめできる一冊だと思います。
恩田陸の世界。
「木守り男」、「悪魔を憐れむ歌」、「幻影キネマ」、
「砂丘ピクニック」、「夜明けのガスパール」の5編からなる短編集です。
実はあとがきを先に読んだところ、
本編の主人公・塚崎多聞が未読の「月の裏側」に出ていたことを知り、
あわててそちらから読みました。
分類としてはホラーだと思うのですが、最後がまたいつもの「恩田節」で、
不思議な気分で終わってしまいました。
そしてその余韻を引きずりつつ、本作を読みました。
こちらはトラベルミステリーでした。
どれも込み入った話ではなく、比較的読みやすいと思います。
そんななか、表紙にもなっている尾道(と思われる街)を
舞台にした「幻影キネマ」を、わたしは一番面白く読みました。
子供の頃から思いこんできたことの謎が解けるときは、
その答えはあまりに簡単なものなんですね。
ちょっとホッとする話でした。
そうかと思ったら、ラストのお話はなんだかそれまでの4編を根底から覆すような、
わたしには衝撃的なものでした。
やっぱり恩田作品だわ・・と思って本を閉じました。
「不連続」をどう捉えるか?
「不連続」をテーマとした全5編の短編小説。
既作「月の裏側」の登場人物の一人である、
塚崎多聞が主人公として活躍するミステリ。
既作を見る必要は全くありません、既作で名前だけ登場した
奥さんも登場しますが、おおそんな名前だったな!
と思うくらいです。
恩田陸の作品で、一人の主人公を置いた連作短編といえば
「象と耳鳴り」を思い浮かべるが、
本作は似た雰囲気ながら、より「月」に近いSF感がある。
5編の中で最も気にいったのは、
聞いた人が死んでしまうという歌を追うミステリ「悪魔を憐れむ歌」なのだが、
この作品は上記「象」の一編「ニューメキシコの月」に非常に通じるものがある。
また本作は日本各地を転々とするが、
「まひるの月を追いかけて」の紀行情景描写、
「ユージニア」のノスタルジーも随所に見られます。
各短編の発表の幅が8年近く空いているだけに、
そういった移り変わりや比較も出来るんだろうと思う。
ここに挙げた既作のどれかでも好きな人なら、
かなり直撃の作品ではないでしょうか。
「象」が大好きな私としては久々のヒットでした。
…ただ、上記に「月」を見てなくても大丈夫とは書いたが、
それは同時に主人公は多聞である必要はあったのかなとも思った。
まあでも…最終章などは「象」の関根多佳雄ではきついかな。
「おまえ、多分『嫌な予感』が他人よりも発達してるんだよ。
無意識のうちに、何かが起こることを予感していて、知らず知らずのうちに身体が反応しているんだ。」本文264ページより
三月は深き紅の淵を (講談社文庫)
恩田 陸 講談社 講談社
恩田陸初心者からマニアまで楽しめる作品
「三月は深き紅の淵を」
本好きなら、思わず手に取りたくなるようなタイトルです。
数年前、タイトル買いをして恩田陸という作家を知ったきっかけとなった作品でした。
4章仕立てになっていて、それぞれが登場人物も、ストーリーも、全然違う。
でも、話の底辺には「三月は深き紅の淵を」という、人を惹きつけてやまない、魅力的な本がある。
ひとつひとつのお話の細部を忘れてしまったとしても、日常の中でふと、その一節を思いだす、そんな不思議な本です。
年間300冊程度乱読していたときに読んだ作品ですが、埋もれることなく、いまだマイベスト5に入っています。
また、「黒と茶の幻想」など、他のリンクした作品を読んだ後もう一度読み返してみるとまた味わいがあります。
恩田陸にはまれるかどうかの踏絵
内容は、たくさんの方が書き込んでいらっしゃるので、あえて書かない。
私はこの本で恩田ワールドに引き込まれた。こういう形式はほかにもいろいろあるが、「三月」はたまらなく魅力的だ。図書館で借りて読み、迷わず買いに走った。
ただ、これを入門書にしてしまうと、続けて読めない人もいる気がする。恩田ワールドはどこまでも広がりを持っているので、これで偏見を持たないでほしい。この類は稀に含まれているだけだから。
自分だけのものにしたいがゆえに紹介が躊躇われる本
恩田陸さんの作品は、それが備えている振動が小さいと思う。
振幅が小さく、振動の周期も長い。ゆったりとした波を描く。
平坦なのだ。まるで(今、非常に不謹慎なたとえを思いついたがそれは禁じ手にする)
中京競馬場みたいなのだ(不謹慎じゃないけど頭悪そうなたとえだな)。
しかしそれは読後の感動が小さいという意味ではない。
確かに「こりゃすげぇ! 今までこんな本読んだことねえや」
ってな種類の感動はやってこない。しかしながら確実に
“染み入るような”感動がやってくる。
いい本なんだけど、だれにも紹介したくない、
そんな自分だけのものにしたくなるような本を書く、
それが恩田陸さんであり、その代表とも言えるのが本作である。
紹介したくないけど、いい本だから、ひっそりと紹介しておこう…。
抽象的すぎます
同タイトルの本をめぐる4つの物語の連作短編集と最初は思ったのですが …… 。
第一章は非常に面白かったのですが、段々と意味不明になり、結局、その本が何だったのか、
よく分かりませんでした。
調べたところ、別作品とリンクしていて、それらを読むと、スッキリする部分もあるようなのですが、
1冊の本として、これは如何なものかと、些か疑問に思います。
第一章のスタイルで物語が進んでくれたなら、もっと高評価できたかもしれなく、
大変残念ですね。
ストーリー、構成、おもしろさ、全てにおいて最高の作品!
私が恩田陸を知ったきっかけとなった作品です。
四部構成となっており、全てに、「三月は深き紅の淵を」が、キーワードとして出てきます。
中には、別で一冊出ている話を再編してうまく織り込みながら構成してる章もあり、これを読むとそれらも読みたくなるという、読書好きには嬉しい特典付きです。
ただ、「三月は深き紅の淵を」という、一冊の本のあり方が、章ごとに違うので、同じ視線で読むと分からなくなるかもしれません。
読書が日常となってる、正に読書好きにオススメしたい本当におもしろい作品です。
そして、この作品を読んだ後は是非、「麦の海に沈む果実」を読まれる事をお勧めします。
いのちのパレード
恩田 陸 実業之日本社 実業之日本社
恩田陸版《異色作家短篇集》登場/奇妙な味の15の短篇を味わおう
■早川書房のドル箱叢書《異色作家短篇集》(18巻、1959‐1963年)は、リチャード・マシスンやロバート・シェクリィやジョン・コリアなどの幻想怪奇風味溢れた極上短篇がぎっしり詰まり、読書家に愛された。70年代に新装再刊、近年全20巻の構成で三度復刊されるなど根強い人気を誇る。恩田陸は同叢書を深く愛好、強い影響を受けたという。本書は恩田が、同叢書にオマージュを捧げて編んだ《恩田版異色作家短篇集》。15作が収録されている。
■幾つか小説の実験が展開されている。例えば「エンドマークまでご一緒に」は、まるでファンタジー・ミュージカル映画の台本のような構成で若い男女のロマンスが描かれ、ライオンまでもが歌を歌う。また「蛇と虹」は姉妹の対話形式で物語が構成されている。
■どの作品も謎と幻想に満ちている。「かたつむり注意報」は伝記作家が異国の田舎の宿でかたつむりの大群に遭遇する怪奇譚。「夜想曲」は、創作の源泉あるいは〈物語の神〉のような存在がアンドロイドに憑依し超生命体として進化させる奇想SFだ。そして表題作「いのちのパレード」では、地球上の死に絶えた生き物が延々と行進を続ける。行進の観察者も既に死者であることを暗示させ、書評子はロッド・サーリングの傑作TVシリーズ「ミステリー・ゾーン」なども思い浮かべた。
感心した!
さすが作家である、と唸るくらい感心した。一話いちわごと話の設定が全く違う、しかし共通のあやしく、おどろおどろしさは残っている。
本書を読んで文章表現も参考になった。一つひとつが短いので、しっかり鑑賞できた。
異様かつ刺激的
15篇の異様極まりない作品集。
どの作品にも「異様」という言葉に加えて「突飛」という言葉すら当てはまる。
それは、読者の予想が大きく裏切られるという、読み手側にとっての楽しみが大きいという意味だ。
例えば、前の方に配置されている「スペインの苔」では、少女とロボットのオモチャとの関係の解説は、十分に分かる。
ところが、ロボットのオモチャとスペインの苔との関係は、、、!!!???
いったんは、我が眼を疑ったが、とにかく突飛なのだ。
全作品が、こんな調子であって、ファンタジーとは、趣が異なる。
それでは、これらの作品群は何なのか?
著者の数々の長編推理小説には、度々、展開の予想を大きく裏切られて、悔しい思いをするが、それが楽しみでもある。
同様に、本書では、物語の流れの中で、予想する数ページ先には、まるで想像も出来なかった事が書かれている。
つまり、常人が通常、考えもしない様な事が描かれているのだ。
異様かつ突飛なのだが、決して悪い意味ではない。
ページをめくると、10分間隔で脳がしびれる、刺激的な作品群だ。
「幻想と怪奇」の遊園地に遊ぶ
底意地の悪さを秘めた話、背中がひやりとする話、奇想天外な話など、色んなテイストの「奇妙な味」系の話を収めた短篇集。シャーリイ・ジャクスン、パトリシア・ハイスミス、ルース・レンデル、ディーノ・ブッツァーティ、ジャック・フィニイ、ジェラルド・カーシュ、星新一といった名手(銘酒)の作品への作者のオマージュを、あちこちで感じました。
2004年から2007年にわたって、「奇想短編シリーズ」と銘打って『月刊J(ジェイ)ノベル』に掲載された短篇に、トリを飾る書き下ろし短篇を加えて・・・・・・「観光旅行」「スペインの苔(こけ)」「蝶遣いと春、そして夏」「橋」「蛇と虹」「夕飯は七時」「隙間」「当籤者(とうせんしゃ)」「かたつむり注意報」「あなたの善良なる教え子より」「エンドマークまでご一緒に」「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」「SUGOROKU」「いのちのパレード」「夜想曲」の、全部で15篇を収録。
とても楽しめた作品から、さっぱり面白くなかった作品まで、玉石混淆の短篇集だったなあ。5点満点をつけたのは、「かたつむり注意報」と「夜想曲」のふたつ。幻想的な風景にひたひたと浸された「かたつむり注意報」(ハイスミスの『11の物語』収録作品と読み比べてみるのも一興)。英国怪談みたいな雰囲気の中に、心地よいファンタジーの煌めきと余韻を感じた「夜想曲」(星新一の名品「鍵」の風情あり)。
子供を素材に使っても、レシピ次第でこんなに異なるテイストになるんだなあと印象に残ったのが、「夕飯は七時」と「SUGOROKU」。前者のコミカルで奇想天外な味、後者の閉じた世界のユニークな味。不思議で風変わりなテイストの妙。ごちそうさまでしたっ!
異色感漂う作品に仕上がっています
ホラー、SF、ミステリー、ファンタジー等15編から構成されています。なんとなくモヤモヤしていてそういう所、恩田さんらしいと言えばらしい作品です。個人的には、考え方的に面白いと思ったのは『SUGOROKU』。「上がり」を目指すゲームでお馴染みの双六だけれども発想を変えるとこんなにも異色な空気を醸し出してしまうのがすごい…。『夜想曲』も幻想的で好きです。様々なジャンルから成り立っていて独特のふいん気が漂っている作品です。今までの恩田作品とはまた異なる世界です。
ネバーランド (集英社文庫)
恩田 陸 集英社 集英社
ハードカバーの装丁が素敵なのだが
なぜか文庫版しか出ないんですな。これから購入をお考えの方、もし可能ならハードカバーを探してみてね。ご本人もとても気にいっておられるご様子だから。
さて、中身はもう語り尽くされているようだが、テレビドラマを先に見ちゃった方、あれは全然、別物である。大体、季節は冬でなければならないのだ。女の子も、それはちょろっと登場はするが、基本的には男の友情のお話だ。こういうものを読んだとき「少年」という生き物に嫉妬する。女の子ではどうやっても無理な関係だもんね。
透明でみずみずしい
とある男子校の寮での冬休み。
実家に帰省しないで過ごすことに決めた美国たち3人と
寮生でもないのに出入りする統という少年。
ともに食事をしたりゲームをするうち、それぞれの抱える痛み、隠していた秘密を少しずつ語りだす。
秘密の内容は衝撃的というほどの重さを持つものもあるけれど
そんな重い過去を持つ4人が集まるなんて、ありえない設定・・・とは感じませんでした。
人が死にたい、立ち直れない、と思う出来事は、程度の差はあれ、生きていれば皆一度や二度は感じたことがあるのではないでしょうか。
作品の中の少年たちのように、それが幼児期や思春期に差し掛かった頃に経験してしまうと辛いものがあるかもしれませんが、それでも「友」に助けられてそれぞれが立ち直っていく姿に、私は勇気付けられました。
ほんと、「友情」っていいな。
透明で淡々とした文体のせいか、「秘密」の重さにもかかわらず、読み終わると、なぜか爽やかで、ちょっと切ない気分になる。
恩田マジック?!
大人になった彼らの物語も読んでみたくなりました。
体験していなくても感じることができる。
男子校で寮暮らしをしていた……そんな学生生活を送っていなかったとしても、なぜかこの『ネバーランド』を読むと、自分自身の学生生活を思い出してしまいます。同じ著者の『夜のピクニック』と同様に、そんなエッセンスが満載です。
このレビューを書いているのは12月23日。物語もちょうど冬休みに入って、実家に帰ることなく寮で年越しをすることを決めた3人の同級生と1人乱入する同級生。料理をしたり馬鹿話をしたり……それぞれが抱える不安と過去と、そして見えない未来を共有して……
体験しなくても感じることができる……そんな大事にしたいストーリーです。
深い話。。。
学校が舞台のとても奥の深い話。
気づくとページをめくる手が止まらない。。。
読み終わると、なぜだか温かい気持ちになれるこの本が大好きです。
驚きの事実も、静かな雰囲気で流れていきます。
なかなか考えさせられる本でした。
個人的には好き。
やっぱりこういった友情を感じられる作品はつくづく良いなぁと思ってしまう。
すこし不満な点もあるがここでそれを描くのはまだ読んでない人に対して作品の価値を下げてしまいそうな主観が入るのであえて書かないが、
手にとってみて少しでも惹かれたのあれば読んでみて損はしないと思う。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 » [13]
合計件数:126 合計ページ数:13