倒錯の死角(アングル)―201号室の女 (講談社文庫) 倒錯の死角(アングル)―201号室の女 (講談社文庫)
折原 一   講談社   講談社  
女は怖い、女は怖い
本作は作者の表芸の叙述トリックもの。題名が示す通り、男が向かいのアパートの201号室の女を覗き見し、秘かに楽しむという隠微な趣向が見もの。作者の他の叙述トリックものに比べ、ブラック・ユーモア味が濃い。

男が女を観察するうちに、女がある事件に係わっていることが分かってくる。この事件と女を巡って謎が錯綜し、やがて真相が分かるのだが...。

真相が明らかにされた時、「(気を付けているのに)うまく騙された」と思ったが、それよりも強く感じたのは、「女は怖い」、「女は怖い」ということだった。本作は読みやすくできているので、折原氏あるいは叙述トリックものの入門書として最適の書としてお勧めできる。
となりのサイコさん
作者が読者に対して直接仕掛ける種類のパズラーが、いわゆる叙述トリック小説です。
どこかに仕掛けがあるのは判っているから、読む方は一語一句読み落とさないよう、神系を集中して読み進む訳です。
それでも、最後には実に見事な背負い投げを喰らわされる(古いかな)のが、折原一氏の作品なのでした。

真相を明かされた後、同じ文章を読み直してみると、全く世界が変わってしまうのも醍醐味。
この作品は、折原一氏の長編第1作――では実質上ないのですが、まぁ最初期の作品の一つです。という事で(?)プロットが比較的判り易く、一度読んですんなり把握できるのが嬉しい所。

とは言っても繰り返しますが、2度以上目を通して真の凄さに瞠目できる逸品なのは、折原作品たる真髄なのでした。お奨めです。


叔父殺人事件―グッドバイ (講談社文庫) 叔父殺人事件―グッドバイ (講談社文庫)
折原 一   講談社   講談社  
“語りの魔術師”折原一の真骨頂
本書は、“叙述ミステリーの第1人者”“語りの魔術師”折原一の41作目に当たる小説の文庫化である。

本書は「ネット集団自殺」という、ワゴン車で練炭を使って決行当日まで見知らぬ他人同士が複数で自殺するという、まさに今日的なテーマを扱って、さらにひとひねりもふたひねりもした趣向になっている。

叔父が巻き込まれた集団自殺事件を捜査する「僕」の“現在”の視点と、自殺志願者を取材するルポライター「私」の“過去”の視点が、そしてふたつの異なったフォント書体で綴られる物語が、短い章立てで、激しく交錯する。

物語の終盤では、ネットで知り合った他人同士が集合し、1台の車に同乗して、淡々と死の場所へ向かう姿が、分刻みで描かれ、そのスピード感・緊迫感に圧倒される。

最後は驚愕の結末に向かって一気に収束する。そして読者は、この物語には、まず表紙からはじまって、はじめから巧妙な伏線が、いたるところに読者の間隙を突いて張り巡らされていたことをあらためて知るのである。

まさに“折原マジック”ともいわれる著者独特の凝った仕掛けが全編にわたってほどこされた、折原ファンには応えられない逸品である。


黒い森 黒い森
折原 一   祥伝社   祥伝社  
その遊び心は買いだが、いっそ袋は綴じたままの方が、、、。
 昔、折原 一の「遭難者」を読んだ時、巻末の謎解き部分が袋綴じになっているのを見て、この人はウイットに長けた作家だな、と思ったものだが、今作は更に趣向が凝っている。ある目的でミステリアスなツアーに別々に参加した訳ありの恋人同士が遭遇するサスペンス。手に取れば分かるように、表紙と裏表紙がご丁寧にも上下逆さまに印刷され、「生存者」と「殺人者」のふたつのパートとして、それぞれの立場から描写され(しかも、お互い126ページと127ページとほぼ同数の枚数で書かれている念の入れ方!)、本の中央部分にお約束の袋綴じされた解決編が挟み込まれているというこだわり。シャレっ気がある人ならこれだけでニンマリする事請負の楽しさだと思う。物語の展開もホラー要素が盛り込まれた連続殺人でケレン味溢れる装丁も手伝って、それなりに面白く読み進めたのだが、正直、純粋にミステリーとして評価すると大した出来ではない。とにかく謎解きとクライマックスがまるで盛り上がらないのだ。ペーパーナイフで袋綴じを開ける時の期待感が拍子抜けに変わってしまうのは残念。これは、あくまでも、その遊び心と実験精神を買うべき作品。話のネタにはなると思うので、読んで損はないが。
袋とじにするほどではありませんでした
久しぶりに手に取った折原作品でした。
表からも裏からも読めて、解決編が袋とじという、期待させる装丁。

目的地不明のミステリーツアーが舞台。1人また1人と参加者が居なくなります。

テンポ良く読み進められ、ミステリーとして充分に楽しめます。
が、樹海という重苦しさに途中でちょっと辟易してしまいました。

結末の袋とじは、そこまでじゃないなあ・・と思ってしまったので☆3つです。

テンポの良いエンターテインメント
本書は中央が袋綴じになっていて、前半分が「生存者」、後ろ半分が「殺人者」となっている。
「生存者」と「殺人者」の両方を読了してから、袋綴じ部分を開いて、結末を読むという趣向の凝った本。

本書のミステリー・ツアーとは、富士の樹海に入ってゆくという、危険極まりないツアーだが、
こんなツアーに参加して、はたして、生きて帰る事が出来るのか?と思ってしまう。

そして、生存者と殺人者のどちらを読んでも、凄まじい内容となっていて、
手に汗握るサスペンスが展開され、その展開のテンポが早い。
そのため、ハイペースで展開を楽しむ事が出来る。
つまり、一時も早く、先を読みたくなる。
内容は、スリルがあって、少々怖い。

一息つく暇もなく、次々と提示されるスリルとサスペンス。
そして、袋綴じ部分の中身を読む時の、最後の楽しみもなかなかのもの。

テンポの良さが光る、大変楽しいエンターテインメントだ。

意欲作ですが・・・
前からも後ろからも読めて、結末は袋とじになっているという面白いしかけの本です。
引き裂かれた恋人同時が樹海の山荘で待ち合わせ、そこにたどり着く前に一人一人姿を消していくというストーリー。
女性の視点から描いた「生存者編」ではホラーテイストいっぱい、男性の視点から描いた「殺人者編」では推理小説となっています。
肝心の中身はと言いますと、まず現実的にありえない設定なのでリアリティがない。殺人者編は推理するポイントも少なく、けっこう早く犯人に目星をつけることができる。というマイナス点があります。プラス点としては生存者編はかなり怖く、読んでてゾクゾクします。
袋とじをあけるときはドキドキして期待度がかなり上がりますが、そんなに衝撃的な結末ではありませんでした・・・
まぁ短時間で一気に読破できるし、スリリングな展開でおもしろいことは確かです。
しかけ、スピード感など楽しめる要素が多い
ひとつの事件を二人の異なる人物の視点から描いている作品。書店で手に取った
時には、前後どちらからも読める作りに少々めんくらった。
同一の事件といっても微妙に時間軸がずれており、女性を主人公にした「生存者」編
ではホラーのテイストを、男性を主人公にした「殺人者」編では推理を楽しむことに
フォーカスすると楽しめるだろう。
肝心の内容はと言えば、外界と断絶された世界で一人一人姿を消す、「そして誰も
いなくなった」スタイル。一人ずついなくなるということは、犯人も絞られることを
意味するので、じっくり読んで犯人を推理できる。

ただ、惜しいのは、「プロローグ」の部分が本編とあまり関係しているように
思えないこと、袋とじ部分の前に犯人が特定できる可能性が高いこと、ツアーの
目的や主人公二人の参加のいきさつにややリアリティがない点である。
そして、何より、作者が得意とする「叙述ミステリー」というか、読者をミスリード
するような巧妙なストーリーテリングや設定があまり感じられない。
スピード感たっぷりで、いろいろなしかけのある作品なので、少し残念。

異人たちの館 (講談社文庫) 異人たちの館 (講談社文庫)
折原 一   講談社   講談社  
折原叙述ミステリーの代表作
折原一の作品の中で、3指に入るといわれているもの。折原自身も、叙述ミステリーとして自分の到達点みたいなこと言っています。確かに、分厚いけど、どんどん読める。半日で一気に読ませる折原ワールドは魅力ですね。出てくる人物のユッコも魅力的。こんな女と付き合ってみたい。ただ、ミステリーとしての切れ味はどうか。意外性といえば、いろいろあるが、連続幼児殺しの犯人については、想定の範囲内というか、意外性なし。主要人物の生死という点でも、一人称の樹海の中のモノローグが最初から出てくるので、予想しやすい。あと、なぞの、もう一人の取材者は、ちょっとつけたしっぽい。そういうわけで、あまり驚愕のラストとはいえない。むしろ、この作品の優れているのは、女経営者が、異様な息子の自伝を書いてくれとたのむ設定と、この異様な館の不気味さにある。そして、その「天才少年」が年を重ねるにしたがって、今生きている人たちの秘密もわかってきて、ゴーストライターも実は、その物語にかかわっているということ!(これが意外な真相か!)だまし絵をこれだけ、いっぱい重ねるとどれが真相か、どれが驚愕の真実かということが、わからなくなってしまう。その意味で、これは折原叙述ミステリーの到達点だが、飽和点でもあると思う。初期の作品や、中町信くらいの、複雑さのほうが、最後のカタリシスがあるんではないかな。
プロローグとエピローグの対比が見事な傑作
折原氏の表芸の叙述トリック物の代表作。プロローグで富士の樹海で死んでいく男が、薄れいく意識の中で母の呼ぶ声を聞くシーンが描かれる。

話は一転、売れない作家島崎にゴーストライターの仕事が舞い込む。宝石商の小松原という女が、一年前に富士の樹海で遭難死した息子の淳の半生記を書いて欲しいというのだ。金のため、島崎はイヤイヤながら仕事を引き受けるのだが、小松原家の様々な謎に魅入ってしまい、否応なしに事件の渦中に巻き込まれる...。

作家志望だったとは言え、夥しいまでに残された淳の資料。女の子として育てられたらしい淳の幼年期。淳の義父の謎の失踪。時折挿入される童謡「赤い靴」。淳の義妹が狙われた幼女誘拐殺人事件。謎、謎、謎。これらが、作者得意の文体の書き分けで、1人称、3人称、新聞記事、作中作、誰とも分からぬモノローグ等で構成されるのだ。読者は錯綜した謎の迷宮に入り込む。

最後に明かされる真相は意外なもので、作者の構想に驚かされると共に、歪んだ母子関係に慄然とさせられる。エピローグで描かれるシーンはプロローグと見事に対応していて、作者の手腕を改めて感じさせてくれる。叙述トリック物でありながら、構成の整然性が見事な傑作。
そんな、言うほどのものでは・・・
解説などでも折原の代表作!とか絶賛されてるけど、どうだろう?そんなにすごい大ドンデンってほどでもないかな・・・。正直、分厚いわりには、呆気ないなぁって感想です。

たしかに、あいまあいまで挿入されるモノローグの真相は良かった。これは騙されたけど、淳のオトンに関しては、名前からなんか予想できてしまって、まんま予想通りだったのでショボです。あと、っまあそこまで感じないけど、やはり進行が若干もたついてるような。これも分量がやたら多いせいだろう。200ページほど圧縮すれば、ちょうど良い長さになってたのではないかな・・。あと、謎の尾行者の正体も、なんか強引な感じがしました。やはり「倒錯のロンド」が一番でしょう。実事件をモチーフにしてたのは良かったですね。幼女連続殺人の今田勇子名義(ユッコ)とか、その辺のレトリックは上手かったです
騙されました
叙述トリックといえば折原一。
今回も騙されないように身構えながら読んでいきましたが。。。

筆者の作品を何冊か読んでいますが、その中でも上位に入るほどのサプライズがありました。折原作品を読んでみたい方、叙述トリック好きの方は是非一読を!
疑っても騙されました。
文庫で600ページ以上もある長い作品ですが飽きることなく楽しく読めました。主人公の島崎は売れない作家で、生計を立てる為にゴーストライターをやっています。ある日、彼のもとに裕福な中年女性からの依頼が舞い込みます。富士の樹海で失踪し、おそらくは死んだと思われる息子の伝記を書いて欲しいというのです。仕事を始めた島崎は、息子の部屋に残された膨大な資料を読み進めながら彼の生涯を追っていくのですが・・・。

基本的には三人称の文章なのですが、随所に一人称の断片的な文章が挿入されています。それを書いているのが誰なのかという点にトリックがあるのだろうと誰もが疑うでしょうが、私は疑いを持ちながらもまんまと騙されてしまいました。伏線であるという匂いをプンプンさせておいて、それでも読者を騙し切る手腕はたいしたものです。


沈黙の教室 (ハヤカワ文庫JA) 沈黙の教室 (ハヤカワ文庫JA)
折原 一   早川書房   早川書房  
評価ほどでは
人によって当然評価は違うと思いますが
万人が良いって言う程の作品ではないように思えます
とは言え、このページ数を読ませてしまうのですから
力のある作品だとは思います
意外性は少ないが読んじゃう
作者自身も、この本は、そんなに好きではないと、別の本の解説で語っています。確かに、作者としてはこの小説と違う作品で、賞をもらいたかったのだろうと思います。そう言う意味では、彼の代表作ではないと思います。小説の結末や、犯人に、そんなに意外性はないし、読後感もそんなによくありません。…でも、そういいながら、この本は、面白く、引き込まれるように、どんどん読みました。それは、最初に記憶喪失の男を登場させ、それと恐怖新聞の支配する過去の学校がどうかかわるのか?記憶喪失の男の招待は?という、導入部の設定が謎にみちていて興味深いからだと思います。読んで損はない本だと思います。
折原氏の最高傑作
個人的には作者の最高傑作だと思う。20年前の小学校の同窓会の通知が復讐劇の始まりとなる。そのクラスは正体不明の"恐怖"に支配され、その"恐怖の支配者"に逆らう者は"粛清"される。なにしろ"恐怖新聞"が配られるのだ(つのだじろうみたいだ)。そうした過去の忌まわしい出来事が「百物語」の形式で語られる。この過去の描写は圧巻である。

それとカットバックして現在の連続殺人事件が描かれる。いやが上にも緊迫感が高まる。過去と現在の謎が錯綜する中、結末に近づいても犯人の正体を掴ませない作者の卓越した技巧。異様な程に息詰まるサスペンスと本格の味とが見事に融合した現代ミステリの傑作。
題名にひかれて
題名がまずおもしろそうで買いました
分厚いので読めるか心配でしたが 読み終える頃にはどっぷりと
つかり、折原ワールドにはまりました
続編も早速 購入してるので引き続き はまりたいと思います
この方の本はまだ三冊目ですが 独特な書き方で読者を唖然と
させますよね~
ホントに上手いです!!
肩透かし
『恐怖新聞』meets『魔太郎が来る』?
どんな叙述トリックかと期待していたら、あまりにもそのまんまで拍子抜け。
あるべきパーツがあるべき場所に収まるだけなので驚きも何もない。

黙の部屋 (文春文庫) 黙の部屋 (文春文庫)
折原 一   文藝春秋   文藝春秋  
サスペンスとは違う
あらすじは、作中の本当の主人公?の石田黙という人が書いた絵画をめぐるサスペンスというものなのだが、本の解説にもあるように、これは果たしてサスペンスだろうか?確かに折原作品にはお決まりの叙述ミステリー仕立てにはなっているつもりだが、この叙述も「これがどうしたの?」程度だし、本文はほとんど美術の話しと、水島という記者のまぬけぶりの紹介だけなので、飛ばし読みですぐに読み終わります。事件の真相のところも、「えっ?これだけ?」です。この本で印象に残ったのは、石田黙が描いた本物の絵画だけです。絵に関してはど素人だが、この絵はなんとなくすごいとは思いました。推理小説としてはいま一つな内容でした。


叔母殺人事件<偽りの館> (講談社文庫) 叔母殺人事件<偽りの館> (講談社文庫)
折原 一   講談社   講談社  
知識がいい加減
著者は相変わらず親族・相続に関する法知識がいい加減であることを認識させられた。
もしかして著者は,甥や姪が法定相続人の資格を持ち,更に遺留分も持っていると誤解してるのではないか?
遺留分は被相続人の配偶者,親,子のみが持つものであって,法定相続人であっても兄弟姉妹には遺留分はないし,ましてや法定相続人ですらない甥姪に遺留分があるわけがないのである。
たしかに,被相続人が甥のために遺言書を作成しようと考えている場面もあるが,それとて,本書全体を通して読めば,甥が法定相続人であることを前提とした記述であるとしか思えないのである。
以上のことは,少し専門書を調べるなどすれば簡単に分かることなのに,それすらしないで相続をメインテーマに据えた話を書こうという姿勢には首を傾げざるを得ない。
「叔母」と「伯母」
叙述トリックの名手、折原氏がR.ハルの名作「伯母殺人事件」に挑んだ作品。倒述ものの傑作に挑むからには、さぞかし驚愕の仕掛けが用意されていると思ったのだが、期待を大きく裏切られた。

冒頭で対象の「叔母」が三姉妹の末っ子だと書いてある時点で、「こりゃ、ダメだ」と思った。3人の母親と3人の子供。ルポライター風の男が事件が起こった屋敷に無断で入り込んでも誰も咎めない点と、「叔母」と「伯母」の意味の違いを重ね合わせて考えると、物語の構図は明瞭に浮かび上がって来る。物語における6人のピースも構図に嵌り過ぎている。叙述トリックの名手の名が泣く出来。また、異常心理の「甥」が書く、折原氏が得意とするゴシック体の日記も迫力・緊迫性に欠ける。更に、ハルの「甥」の描写にはグロテスクな笑いがあったのに比べ、本作はユーモア味を欠き、かと言ってサスペンス性が強い訳でもない。本筋とは関係ないのだが、「赤城おろし」と言う言葉を使用している以上、前橋市か高崎市を想定しているのであろうが、その周辺を"田舎"と決め付けるのは、その地方の方に失礼であろう。特に、隣県出身の折原氏としては。

古典に挑んだ割には空振りに終ってしまった残念な作品。しかし、その心意気を買って星3つ。
今回は少し予想できた
今は推理小説はもうほとんど読まなくなったが、折原一の作品は欠かさず読むようにしている。今回も折原一の十八番である、「叙述トリック」なのだが、いつも騙されるので、今回こそ騙されないぞと思いながら読んだが、今回は半分くらいは予想できたので、作品はまあまあの出来でした。ただ、自分の読解力が悪いせいかどうか分からないけど、最後のエピローグと、最初のプロローグが、どうつながるのかよく分からなかった。最後まで読んでみて、もう一度読み返してみても、腑に落ちない点があるのが少し残念だった。


冤罪者 (文春文庫) 冤罪者 (文春文庫)
折原 一   文藝春秋   文藝春秋  
折原マジックは何処に
本作において、作者は本来の叙述トリックものに"冤罪"と言う社会性を加え、新境地を開こうとしたものと思われる。結局、「者」シリーズは四部作となった。

しかし、作者のデビューから付き合っており、作者のファンでもある私からするとトリックが全く物足りなかった。前半で語られる"冤罪者"に関するエピソードを額面通り受け取る読者はいないだろう。また、この冤罪者に対して救済活動をする女性が出てくるが、彼女の行動・心理状態が理解不能で付け焼き刃にしか感じなかった。ご都合主義的に登場させられたとしか思えない。後半、折原マジックらしきものが表面化してくるが、従来の枠組みを越えるものではなく、私の中では予定調和で終った。正直、作者が何処を読者に謎と思って欲しいのか分からない程だった。

社会性をプラスしたミステリの試みは本作では成功していないように思われる。
してやられたり。悲喜劇ジェットコースター!
騙されます。騙されるとわかっていながら、見事に。

正直、話は重く、結末に向かうにつれ悲しさも増します。
しかし!
前半の冗漫な導入とはうって変わって、
サスペンスと読むにつれて二転三転する叙述の罠。
悲劇なのに、喜劇。そんな感覚にとらわれます。

相変わらずレビューを書きにくい作家さんですが、
とにかく、折原作品の中ではベスト5に入れられる秀作です。
ミステリー界に、また一つ驚きが
見事にやられた。帯の解説を見て、よくあるデッドリミット物かと思い、読み始めたのだが、予想を裏切る、裏切る。
読み進めるうちに、全ての人物が怪しく思えてくる。ある意味反則な犯人とその動機。
そして、全てが終わったと思えた時に明かされるある人物の本性。
人間の執心、欲望は法をも超える恐ろしさを実感。
映画にしたら面白いだろうな。
ヤバい・・・ハマった・・・
折原一作品は初体験。
私は始めて購入する作家の本は最初の数ページを試し読みして、その
文章のリズム感を確認する。小説を読むという行為は私にとって娯楽
だから、ここで違和感を感じる作家の本はレジに持っていかない。
この作品を試し読みした後、すぐレジに向った。

折原一の文章は情景描写・心理描写ともに秀逸で、この作品は三日で
読了した。

冒頭は冤罪を主題にした社会派ミステリとして始まり、ラブロマンス
(古っ!)、サイコパス、ストーカーと一気に展開するプロットに
は引き込まれる。
WEBサイトやMAILの使い方にも重要な意味づけがされていて感嘆した。
特に「なぜ電話でなくMAILなのか?」には正直驚いた。
なるほど、そうだよな~~~~~~

読了後、折原作品をまとめて4冊購入した。
もう試し読みは不要だ。
折原ワールド全開
「冤罪」を厚かった作品で前半は極めて社会派な感じで進行。が、そのイメージは少しずつ崩れていき、最終的にはいつも通りの猟奇的な殺人、様々にぶれて行くキャラクターと折原ワールドが全開になっていく。最後は全く社会派なんて言えない内容。

人工的な世界観、トリックのための小説、なんていう感じはどうしてもしてしまうので好き嫌いは絶対に出る。その世界観を楽しめる、というのならばお勧め。


七つの棺―密室殺人が多すぎる (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 七つの棺―密室殺人が多すぎる (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
折原 一   東京創元社   東京創元社  
ずっこけ密室殺人
七篇の密室殺人ばかりを扱った作品集。
欧米では密室殺人小説は好まれなくなったものの、日本では、まだまだウケるという着眼のもとに、本書は書かれたらしい。
しかし本書は、本格的正当的なものではなく、密室殺人小説そのものを、少し茶化して描いている。
つまり、結末は「なぁ〜んだ」という様なもので、気負い込んで読むと、少々拍子抜けする。

しかし、唸らされる作品もいくつかある。
「ディクスン・カーを読んだ男たち」は、ウィリアム・ブリテンのベストセラー作品のタイトルを捩っているが、
この密室殺人の発想は感嘆に値するもので、本当にこれが成功するのなら、完全犯罪と成り得る。

事件を捜査するのは、間抜けチックな黒星警部らであるが、警部自身が推理小説、特に密室殺人小説ファンである事も傑作。
警部よりも、若い部下である竹内刑事の方が、洞察力推理力ともに上である事も、大変面白い。

物語は、社会の暗部をえぐる様な事はなく、専ら密室殺人ばかりにスポットをあてる。
あまり考え込まないで、気軽な娯楽推理小説ととらえると、大変楽しい。

エンターティナーとしての著者の魅力が、凝縮されている。

作者の持ち味が出たデビュー作
折原氏の作風は大きくは次の3つに別れる。
(1) 表芸とも言える叙述トリックもの
(2) 古典のパロディもの
(3) 「沈黙の教室」に代表されるサスペンスもの
勿論、この組み合わせもある。

本作は「倒錯のロンド」が乱歩賞を逃した後、結果として初めて世に出る事になった実質的なデビュー作で、初題は「5つの棺」。出版にあたって2つの作品を追加したのだ。題名から分かる通りカーの「3つの棺」のパロディなのだが、そこは折原氏の事、パロディに見せて実はガチガチの本格なのだ。粒揃いの作品が楽しめる。更に恐るべし、密室トリックに叙述トリック風味を加えるという氏らしい試みも行なっている。

探偵役の黒星警部は、C.デクスターのモース警部を意識したものか、平凡な事件を独自の解釈で難解な事件に変容させてしまうという密室フェチの変人で、大いに笑わせてくれる。なお、事件の舞台になっている白岡市は作者の出身地である由。氏のその後の活躍を予想させる傑作短編集。
折原一=黒星光の原点
折原さんのデビュー作。文章の一つ一つが、折原さんの息遣いを伝えている気がして、今もいちばん好きな作品です。誰も指摘していないけれど、黒星光警部は折原一そのままのキャラクターだと思います。
警部黒星光がいい
ミステリーや密室が好きな人なら折原一さんの
このパロディー密室短編集を楽しめると思います。

密室はもはや、パロディーとしてしか成立しない、
という折原さんのスタンスはデビュー当時から
確立していたのですね。ここでデビューする
警部黒星光は、密室パロディーの長編の「猿島館の
殺人」など他の作品にものちに登場することになります。

折原さんのユーモアの部分が現れていて、サイコミステリー
とは違った一面が楽しめます。ほのぼのしていること
もあって、この作品は大好きです。とても楽しめました。
この本が好きです。
たとえ、ご本人が荒削りだとか不出来だとか言われても、私はこの作品集が彼の作品の中では一番好きです。


クラスルーム (ミステリーYA!) クラスルーム (ミステリーYA!)
折原 一   理論社   理論社  
大人も楽しめるジュブナイル
 先に理論社から刊行された『タイムカプセル』の姉妹編。『タイム』が栗橋北中学3年A組、新作は3年B組で起きた事件という設定となっている。
 
 好評を博した前作と比べて、『クラス』は質量ともによりパワーアップ。というのも前作は「袋閉じ」という趣向だったが、今回は正攻法のサスペンスで、ぐいぐいと迫ってくるからだ。10年前(中学時代)と現在とが、叙述で交錯しだす辺りからは無類の面白さで、思わず大人の私でも手に汗にぎってしまうほど。叙述トリックの第一人者は、『消えた時間』のバリンジャーとされるが、折原はその再来といって過言ではなかろう。
 
 また登場する女性2人が、かなり魅力的。女性造詣の点では、『奥能登殺人旅行』に次ぐ出来栄えに仕上がっている。これだけの傑作を子供だけが楽しむのは、勿体ない。大人の方もぜひ――。

ジュブナイル版ノスタルジック・ホラー
理論社の「ミステリーYA!」というシリーズの一冊。
犯人(ホシ)は・・・豪華ミステリー作家たち。
被害者(ガイシャ)は・・・12才以上の読者。
凶器は・・・面白すぎる物語。
――というコンセプトの、いわばジュブナイルであるが、この第一作『タイムカプセル』につづいてラインナップされたのが、折原一の46作目となる、その姉妹編の本書である。

埼玉県北東部の小さな町にあり、いまは廃校となった栗橋北中学校。その3年B組の数人に10年ぶりのクラス会の通知が届く。幹事の名前に誰一人見覚えがなく、会場が夜の学校の校舎であることが不安をかきたてる。これは10年前の忌まわしい「肝だめし」に関係があるのか・・・。

本書はノスタルジック・ホラーの範疇に入る作品だろうと思われるが、いつもの折原一のような、凝りに凝った「文章そのもの」をトリックに使ってしまう叙述ミステリーの影は薄く、ジュブナイルだから仕方がないとはいうものの、おとなの読者が期待する“言葉の魔術師”の本領発揮とまではいかない作品だった。


1   |   2   |   3   |   4   |   5   |   6   |   7      »      [12]
合計件数:111  合計ページ数:12