暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 (岩波文庫) 暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 (岩波文庫)
尾崎 一雄   岩波書店   岩波書店  
とにかく楽しい!
 地味な純文学だろう、とちょっと構えて読んだんですが、とにかく笑えました。作者がモデルと思われる、貧乏な作家と、その奥さんの日常が、落語的なテンポの良い文章によって描かれています。
 主人公の作家は、いかにも純文学の人らしく、悩みがちな人柄なのですが、奥さんは天然と言っていいほど裏表がなく、無邪気に喜怒哀楽を表す人物で、主人公は、「本当に天然なのか?」と首を傾げるくらいです。
 こういう奥さんだと、作家も深刻になりようがない。苦悩に陥ろうにも、どこかでストップをかけられてしまうというおかしさが全編にただよっています。
 短篇集なので、じっくり味わいながら気軽に読むことができると思います。




のんきめがね
妻に暴力をふるう
→妻「の」元から逃げる
→友人の妻に元妻がなる

といった日本私小説の王道を行く作者の元に,のんきめがねをかけたすっとんきょうな若い妻がやってくる。
作者は戦慄する。
また自分はこの女をいじめてしまうのか
と。
そんな短編小説でこの本は始まります。
深刻なボケとボケの夫婦漫才,軍配は若い妻にあがったようです。

ひどい話がなんでこんなにユーモラスなのか,よく分かりませんが,
あれもあい これもあいですね。


単線の駅 (講談社文芸文庫) 単線の駅 (講談社文芸文庫)
尾崎 一雄   講談社   講談社  
自然との調和を重んじ続けた作家の随筆集
本書は尾崎一雄の随想集(昭和51年刊)である。尾崎一雄の文庫本はもはや講談社文芸文庫にしか望めなくなったのかもしれない。値段はやはり高いが、散財とは思わない。

構成は、自然への敬慕、文壇や文学関係、自伝『あの日この日』のこぼれ話、家族関係の逸話の4章立てとなっている。その中から面白いものをいくつか拾ってみる。吉田茂・健一親子をチクリと批判する「日本の言葉・文章」は痛快。浅見淵(「ふかし」と読むことを本書で知った!)への追慕が込められた「贈呈署名本の処置」は味わい深い。そして、石川達三の奢りを痛烈に批判する「寄せ鍋式に」は感動的である。その末尾の一節を引いてみたい。

石川達三は、自分の書くものを「これこそが小説だ」と思っているらしい。私などは自分のものを「これも小説」と思っている方なので、他人の作品は、どれもそれぞれに面白いと思っている。この世にはいろんな花があり、木があり、眺めがあり、人があり、作品がある。それぞれに面白い、と、どうして石川達三には思えないのだろうか。石川が気の毒に見えるわけはその辺にある。

私もこのような価値観に共感を覚える者のひとりである。細心の注意を払って権威主義的にならないようにしようという慎み深さには敬服する。『古本暮らし』の荻原魚雷氏がこの作家に傾倒しているのもうなずけた。

まぼろしの記・虫も樹も (講談社文芸文庫) まぼろしの記・虫も樹も (講談社文芸文庫)
尾崎 一雄   講談社   講談社  

尾崎一雄作品集〈第6巻〉なめくぢ横丁 (1953年)
尾崎 一雄   池田書店   池田書店  

尾崎一雄対話集 (1981年)
尾崎 一雄   永田書房   永田書房  

尾崎一雄作品集〈第5巻〉懶い春 (1953年)
尾崎 一雄   池田書店   池田書店  

沢がに―随筆集 (1970年)
尾崎 一雄   皆美社   皆美社  

尾崎一雄全集〈第1巻〉 (1982年)
尾崎 一雄   筑摩書房   筑摩書房  

虫のいろいろ―尾崎一雄自選作品集 (1968年)
尾崎 一雄   インパルス   インパルス  

川端康成・尾崎一雄・林芙美子 (向学社現代教養選書―小説 (10))
川端 康成   向学社   向学社  

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