ドサ健ばくち地獄 (上) (角川文庫 (5834))
阿佐田 哲也 角川書店 角川書店
人によるでしょう
このドサ健ばくち地獄は私的には「残念」な作品。
同じく阿佐田氏の小説好きな友人は「かなり面白い」との作品。
なのでコレは人によるでしょう。
ただ、私は麻雀放浪記のドサ健を期待したのですが
哲也は出て来ません、そして麻雀メインでもありません。
メインは「手本引き」。
私好みではありませんが星4つ。(星3つでは少ないし。)
私が読んだ阿佐田氏の小説ランクでいうと(あくまで私個人の好みで)
1.麻雀放浪記シリーズ1~4。
2.黄金の腕、牌の魔術師。
3.雀鬼くずれ、麻雀狂時代、新・麻雀放浪記。ドサ健博打地獄(上下)←ここ。
4.東一局五十二本場。ギャンブル党狼派。
5.次郎長放浪記、雀鬼五十番勝負、ああ勝負師、ギャンブル人生論。
まぁこんな感じです。
阿佐田哲也の美学の到達点
作者が幼少時から追求してきた、空想上の舞台でさまざまなキャラクターが総当りで戦うリーグ戦の手法を、麻雀放浪記の主要キャラドサ健を主人公にして描いた長編。
しかし別のエッセイで作者が触れているように、実は作者が本当に好んでいるのはボクシングのクリンチ合戦であり、相撲の水入り試合なので、残酷でドラスチックな結末を期待する一般読者の期待通りにはいかない。
下巻のエンディングはそんな作者の美学のひとつの到達点であるといえよう。
雀師流転―阿佐田哲也コレクション〈6〉 (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館 結城 信孝
これがオレの麻雀―麻雀名人戦自戦記 (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館 結城 信孝
ヤバ市ヤバ町雀鬼伝 三〇〇分一本勝負―阿佐田哲也コレクション (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館
黒鉄ヒロシに表紙絵を描いて欲しかった
07年10月から《阿佐田哲也コレクション》として
1.雑誌に発表されたまま、一度も単行本に収められていない作品
2.単行本に収録されたものの、まだ文庫化されていない作品
3.文庫化されたが現在品切れのため、書店で入手できない作品
が隔月刊行されているが、この作品はその第3弾。前記3.に該当する(単行本86年、文庫本90年発売、初出は小説現代の連載)晩年に近い時期の作品。
第1弾、第2弾と購入してきたが、その感想は「貴重だけど、単行本に収められていなかったとか、文庫本が品切れ状態なのもしょうがないかな」というものだった。
が、今回は違った。素晴らしい。舞台はおそらく現代(連載当時でいう現代)。前科5犯(うち殺人一犯)だけど、物腰柔らかな紳士で現在は風俗店の店長(いちおう雇われ)をしている通称オレンプを狂言回しに一話完結形式で繰り広げられる連作長篇小説。
麻雀が中心となっているが種目は何でもあり。一晩でどれだけの現金を集めることができるのかという種目?もある。ギャンブルの場面もいいが、阿佐田哲也名義の作品の根底に流れる、アウトローの生き様を通じて描かれる人間の喜劇性も充分に楽しめる。
著者の表現を借りると「コクのある」一冊。そして、角川文庫でお馴染みの黒鉄ヒロシに表紙絵を書いて欲しかった一冊だ。
08年4月に発売が予定されている続編が非常に楽しみだ。
ヤバ市ヤバ町雀鬼伝 ゴールドラッシュ (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館
期待通りだったという思いと、ちょっと物足りなかったという思いが交錯した一冊。
07年10月から《阿佐田哲也コレクション》として
1.雑誌に発表されたまま、一度も単行本に収められていない作品
2.単行本に収録されたものの、まだ文庫化されていない作品
3.文庫化されたが現在品切れのため、書店で入手できない作品
が隔月刊行されているが、この作品はその第4弾。前記3.に該当する(単行本87年、文庫本90年発売、初出は小説現代の連載)。第三弾として発売された「三00分一本勝負」の続編でもある。
前作と同じく一話完結方式の連作長篇ではあるが、前作では、物腰柔らかな紳士で現在は風俗店の店長(いちおう雇われ)をしている通称オレンプが主人公でありながら、そこから一歩引いた狂言回し的な役割も与えられていたのとは異なり、彼の姿が前面に押し出されている。
「三00分一本勝負」が、なぜ文庫本が品切れ状態だったのかが疑問に思えるほど読み応えのある作品だったので、この続編の発売を非常に楽しみにしていたのだが、読了後は期待通りだったという思いと、物足りなかったという思いが交錯する結果となった。
それは阿佐田哲也名義の作品の根底に流れる、アウトローの生き様を通じて描かれる人間の喜劇性も充分に楽しめたものの、終盤になるにつれ息切れ感が漂ってきて、最後もスッキリしなかったからだと思う。ただ、解説氏が2編を通じてのクライマックスと評している「東三局 魔人ドラキラー」は素晴らしい。この一編だけを切り取って読んでもその素晴らしさは際立っている。
外伝・麻雀放浪記 (双葉文庫)
阿佐田 哲也 双葉社 双葉社
タイトルに偽りあり
昭和五十年頃を舞台に傑作「麻雀放浪記」のその後を描いた短編集。「外伝」とあるので、「麻雀放浪記」の登場人物達の隠れたエピソードを並べたものかと予想したが、作者の狙いは別の所にあったようだ。色川武大名義の作品も一つ入っている。
ドサ健なども出てくるが、「麻雀放浪記」の"読む者に手に汗を握らせる膨大なエネルギー"は感じられず、むしろ坊や哲(=阿佐田哲也)の当時の枯淡とした雰囲気(=生き方)を感じさせる出来となっている。勿論、麻雀を初めとする勝負の世界が物語の背景にあるのだが、「麻雀放浪記」のように"読む者の血を滾らせる"ものではなく、さりげない描写の中に勝負の綾と厳しさを滲ませるという体裁になっている。
当時の阿佐田さんの年齢に相応しい渋さを感じさせると共に、勝負の業をあくまで追求した阿佐田ファン必読の短編集。
大三元
イーシャンテン二巡目に中を引いてきた。白を泣いているが初は暗刻だ。対家が上がりパイを捨てたが小三元で上がってもオーラス間近なのでトップは取れない。見過ごして一巡目下家が中を切った。ポン。私らここで中は切らない。オーラス間近では慎重を期した方がいいのだ対家が中を捨てて大三元を和了。4万8千点。南4局は上家が安上がりして私の逆転トップで終わった。棋譜を見てなるほどと思った。下家は九連宝燈でイーシャンテンだった。麻雀のルールは公平ではない。簡単な大三元も技術を要する九連宝燈でも役万は役万。結局最後はツキなのだ。若い頃に麻雀から足を洗って良かったと思う。続けていたら身も心もボロボロになっていたことだろう。
大三元
小三元でテンパイした。二巡目に上家が振り込んだが見送った。オーラスが近い。小三元で上がってもトップは取れない。見送って二巡目が出た。迷わずポンして一巡目に対家が振り込んだ。大三元。一気にトップに立つ。オーラスは下家が安上がりして半チャンを終了した。大三元は役万の中でも比較的簡単にできる。食い下がりもないから泣いていけるが普通は誰も放銃しない。対家はよほど大きな手かあるいはトップを守りたかったのだろう。私はこれ以上このメンツでガメルのをやめた。レベルが違いすぎるのだ。編集者に、じゃあ、これでと帽子をとってその場を去った。後日棋譜を見せてもらったときなるほどと思った。対家は九連宝燈イーシャンテンだった。役万というのは何かを犠牲にしないとできないのだと改めて思った。
先天性極楽伝 (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館
阿佐田哲也コレクション〈2〉ばいにんぶるーす (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館
読後にふと感じさせれられる
作品が連載された時期(81年〜82年)を考えると、既に各所で指摘されている通り、初期の作品に見られるような烈しさは影を潜めている。がしかし、登場人物が次々と形を変え様々なバクチに身を投じていく姿は、やはり読んでいて痛烈だ。
この作品は、元バンドマンの若者、ヤクザ者のノミ屋、老ギャンブラーの三人が物語の核をなしているのだが、本の終盤でかなりしつこく筆者の持論(勝ちすぎはいけない、九勝六敗くらいがいい)が老ギャンブラーの口を借りて訥々とバンドマンに語られる。老人には、既に一線を退いた筆者の姿が多分に投影されていることに気づかされる。
確かに筆者自身の姿と作中人物ががダブる作品は過去にもたくさん読んできたけれども、今回は少し違う気がする。突っ走りすぎる若者はバクチで生きていこうとしていた頃の筆者の姿に被るし、ソツなく殺されないノミ屋は麻雀から足を洗い少し遠くから戦いを眺めている頃の筆者の姿に重なってくる。もちろん老ギャンブラーは執筆時の筆者。つまり自分自身を三人(三つの年代の人物)に分けてそれぞれ登場させたのではないかと、読後にふと感じさせられる。
小学館文庫の再刊によって今回このような形で読むことができ、個人的には非常に(再刊されたものに限って言えば今のところ一番)満足している。
「薄味」。ただ、新聞連載だった作品なのでしょうがないような気もするが・・・
1.雑誌に発表されたまま、一度も単行本に収められていない作品
2.単行本に収録されたものの、まだ文庫化されていない作品
3.文庫化されたが現在品切れのため、書店で入手できない作品
これらの作品が《阿佐田哲也コレクション》として07年10月から隔月刊行されているが、この作品はその第2弾で、前記3.に該当する(単行本は82年、文庫本は85年にそれぞれ講談社から発売)。
様々な経歴を持つ勝負師達の生き様を描いた長篇作品。ルーレット、競輪、競馬、賭けゴルフetc。数多くの種目が登場するが、最終的にはノミ屋(達)と一人の老ギャンブラーの一騎打ちが作品のハイライトとなっている。
阿佐田哲也には、同じように多くのギャンブル種目が登場しつつも最終的にはノミ屋と車券師の一騎打ちの姿を描いた「麻雀狂時代」という作品があるのだが、この作品で描かれた勝負師達の凄味、ギャンブラーとしての矜持をかけた闘いの凄まじさと比較すると、この作品は全体的に「薄味」で物足りなかった感がある。
「麻雀放浪記」をはじめ、阿佐田哲也名義で発表された作品の多くは、角川書店が文庫化しているので、初めて著者の小説を読む方はこちらの方がお奨めだ。この《阿佐田哲也コレクション》はコアなファン向けの企画なのだと思う。
ドサ健ばくち地獄 (下) (角川文庫 (5835))
阿佐田 哲也 角川書店 角川書店
ビカレスクロマン
阿佐田哲也氏の感性が存分に発揮された一冊。手ホンビキ、麻雀などのギャンブルの描写もさることながら、主人公ドサ健を中心とした登場人物の心理描写が物語により深みを持たせている。
ぜひとも上巻と併せて読みたい一品。
阿佐田哲也コレクション〈1〉天和をつくれ (小学館文庫)
阿佐田 哲也 小学館 小学館 結城 信孝
文庫本未収録の短篇を集めた短編集。貴重だけど未収録だったのもしょうがない出来かなぁ
1.雑誌に発表されたまま、一度も単行本に収められていない作品
2.単行本に収録されたものの、まだ文庫化されていない作品
3.文庫化されたが現在品切れのため、書店で入手できない作品
これらの作品が《阿佐田哲也コレクション》として07年10月から隔月刊行されるが、その企画の第一弾にあたるのが、この「天和をつくれ」だ。短篇8作品が収められている。
収められたのは前記2に該当する作品だが、編者によると、表題作は単行本未収録作、他7編も「阿佐田哲也全集(福武書店)」に収められた作品とのことなので、実際は8編全てが単行本未収録作品に近い。ファンにとっては貴重な短編集だ。
ただ、貴重ではあるが、作品の出来としては微妙だ。著者の筆癖(口癖?)を借りると「コクが足りない」感じがする。皮膚がヒリヒリする感覚を覚えることもあまりない。いままで文庫化されていなかったのもしょうがないなという気がする。コアなファン向けの一冊。
阿佐田哲也の「短篇小説」を初めて読む人は、角川文庫の「東一局五十二本場」「ギャンブル党狼派」などを手に取ったほうがいいと思う。
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