あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫) あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
井上夢人、初期の10の短篇を集めて。そろそろ、新しい作品を期待したいな
 著者が岡嶋二人から独立した頃から数年間にわたって書かれた10の短篇をまとめたもの。文庫オリジナルで、収録作品の初出は以下のとおり。

☆「あなたをはなさない」 週刊ポスト(1992年9月4日号)
☆「ノックを待ちながら」 別冊小説現代(1992年6月増刊号)
☆「サンセット通りの天使」 IN☆POCKET(1994年7月号)
☆「空部屋あります」 小説すばる(1993年8月号)
☆「千載一遇」 オール讀物(1993年11月号)
☆「私は死なない」 海燕(1994年新年号)
☆「ジェイとアイとJI」 小説推理(1992年11月号)
☆「あわせ鏡に飛び込んで」 JIGPUZZ BOOKS(1992年)
☆「さよならの転送」 小説現代(1995年3月号)
☆「書かれなかった手紙」 アンソロジー『やっぱりミステリーが好き』(1990年6月)
 巻末に、井上夢人と大沢在昌の特別対談を掲載。

 主人公にとってまるで悪夢のような出来事であるとか、疑心暗鬼にとらわれた主人公の不安をテーマにした話であるとか・・・。対談で大沢在昌も言っていたけど、どこに連れて行かれるのか分からない妙味がありましたね。ただ、執筆されてから10年以上経っていることもあり、正直、新鮮味はなかったなあ。岡嶋二人時代からのファンということもあり、著者にはもっとバンバン書いてほしいです。

 面白かった作品は、留守番電話をモチーフにした「さよならの転送」、パソコン通信が主要材料のひとつになっている「ジェイとアイとJI」、このふたつ。前者は、伏線の大胆不敵な提示と、その生かし方がキマっていたこと。後者は、パソコン通信への郷愁と、2台のパソコンが会話するっていうSF風の映像に惹かれたこと。そこに魅力を感じました。

 最後にもう一度、次の文章、ゴシック太文字で →→→ 井上夢人様。この次は新しい作品を書いて、どうか読ませてくださーい。

the TEAM the TEAM
井上 夢人   集英社   集英社  
続編が読みたい!
普通なら絶対共感が得られそうに無い「やらせ支援チーム」
これを一転ヒーロー者にしてしまった井上さんの腕はすごい!
このチームの続編が読みたいです。
とくに草壁の過去には興味があります。
ザ・チーム
いやはや、どんなチームかと思いきや..
一人の霊能者を広報窓口に、徹底的な調査で悩みを痛快に解決する技術、技能集団です。

こう言う手口もあるなー、悪用されると辛いけど。
でも、安心ください。
本の中では、いたってまじめに、正義感を持って、問題を解決してくれています。

テレビでは、霊能者と呼ばれる先生が沢山出演されてブームになっていますが..
どうなんでしょうねー??



様々な事件を解決するチームの活躍
偽霊能師「能城あや子」と彼女を支えるスタッフが様々な相談を解決していく連作ミステリー。能城あや子はある事件で全盲、耳もほとんど聞こえないという設定なので、活躍するのは周りにいるスタッフ。そのスタッフ達が違法行為をしながらも相談者達の悩みを解決していく。それが時には社会的な事件の解決にも結びつく。あまりにも派手に活躍しすぎなので、その能力に疑問を抱くライターとの対決も読みどころ。連作としての構成も見事で、エンターテイメントとして十分に楽しめる。
暴くが花、暴かれないのが花
霊能者能代あや子はテレビ番組で視聴者の相談に霊視で応え、さまざまな事実を言い当てる。相談者本人すら気づかなかった事実や、事件の真相をズバリだ。

それもそのはず彼女には強力な調査チームがついているのだ。事前調査であらかじめ相談者の家に忍び込んだり、ハッキングまがいのことをして個人情報を盗み、相談者の背景を探るふたりの男女。盲目のなんちゃって霊能者能代はその結果をもっともらしく告げるだけ。

しかし単なるお悩み相談で済まないのが小説の面白さ。思わぬ事件の真相が暴かれたり、過去の事故の真実が解明されたりして、相談者の心は軽くなっていく。そして忘れてならないのが能代の霊能力に疑問を抱く記者の存在。これが最後までチームに執拗に迫ってくる。なんとか嘘を暴こうと必死だ。

「被害者が誰もいない」という記者の妻の言葉が全てを表現しているだろう。むろんチームのやっていることは不法行為なのだが、形のあるものを盗んだとか、相手を傷つけたりしないのが彼らのモットー。むしろ悩める人々に真実を突きつけて、迷いを振り払う手助けになっているわけで・・。相談者を暴けば花、自分たちが暴かれなければそれも花という裏返しの微妙さが面白い。短編連作小説なので読みやすい。「ダレカガナカニイル・・」も霊を扱った長編小説だったが、なんと言ってもキレのよさが本作のいいところ。
チョー気持ちいい!!
 幽霊も、呪いも、自分たちを脅かそうとする記者すらも笑い飛ばして、鮮やかに問題を解決してしまうクールな「チーム」の物語。「霊能力者、能城あや子」を作り上げるスタッフたちの活躍がこの物語のみどころだ。コンピューターを自在に操る「悠美」、違法捜査のプロ「賢一」、あや子のマネージャーとしてチームをまとめる「鳴滝」それぞれが連携しあって、あらゆる事件を解明していく。事件の解明にはもちろんミステリの要素が十分に含まれてて、最後まで読まずにはいられないつくりになっている。とにかくこの作品は「きもちいい」作品だ。短編に区切られていて読みやすいし、すべてにオチがあってはずれがない。井上氏の作品はあまり読んだことがなかったが、それでもこの本は楽しく読むことができた。
ただ、この本はエンタテイメント的にはかなり面白いが、あまり感情の描写や表現はなく、「チーム」といっても人間ドラマ的な要素は高いといえない。もちろん報道のありかたや、人の幸せなどについて疑問符をなげかけるようなところはあるが、あくまでもそれはサブであって、けっこうあっさりとふれられるだけ。井上氏の作品はこうゆうものなのかもしれないが、読後の感想は「スカッとした」に尽きる。あまり余韻を楽しむというタイプではなかった。

あくむ (集英社文庫) あくむ (集英社文庫)
井上 夢人   集英社   集英社  
タモリの語りが聞こえてきそう・・・
ドラマ“世にも奇妙な物語”が好きな人は多いと思うけど、あのシリーズは駄作も少なくない。その点、この短編集「あくむ」はハズレなし。何気ない日常の一コマから、予想もつかない恐怖が展開する怖さと面白さ。難しいことは抜きにして、とにかく楽しんでほしい一冊。

プラスティック (講談社文庫) プラスティック (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
ミステリーという枠を外し、現代小説としても最高峰。
 日本ミステリーの傑作中の傑作。ミステリーという枠を外し、現代小説としても最高峰なんじゃないでしょうか?トリック自体はどんな人でも半分以上過ぎたら分かってしまいますが、だからつまらないわけではなく、後半からが面白くなってきます。作者の井上夢人氏がトリックで「アッ」と驚かせようと意図しているとは思えず、54のファイルや複数主人公による進行もストーリー上の必然で、圧倒的な文章力も有ってか、主人公の不幸な過去や哀しみが上手に表現され、一言の台詞すら無い本当の主人公が浮き彫りになってくる構成は圧巻というしかありません。ラストの1ページは賛否両論が色々と有るだろうけれど、私はクールなラストに大感動しました。映像化は不可能に近く(よほど上手くやらないと、視聴に耐えられない代物になってしまう筈)、読み進めていくうちに小説ではないと表現出来ないと理解出来るでしょう。ストーリーは似ていないけれど、何処となく我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を彷彿とさせます。解説も秀逸。
読みやすいということは素晴らしいこと
ある意味井上夢人という作家の特質が如実に出ている作品。

それは、読者にとても「優しい」ということだ。

文章は平明で読みやすく、メインとなるトリックも最後まで引っ張ることのできた読者は驚きを十分に堪能できるであろうし、早い段階で気付いた読者に対しても、自分の考えを確認あるいは敷衍しやすいよう解りやすく伏線を張り巡らせラストまで澱みなく導いてくれる。

この作家は作品のトリックや構成のもたらす効果・驚きを無意味に隠そうとしない。
不要な目くらましやペダントリックな言い回しで読者を幻惑しようともしない。

逆にいえばそれは ぶれのない自信の表れでもあるし、確固たる実力の証ともいえる。

この作品のラストも、トリックの向こう側にあるものを感じて下さい、という作者のメッセージがいやみなく私たちの胸にひびく仕上がりになっている。


可塑的な存在の私たち。その恐ろしさ。
出張中の夫の帰りをひとり待ちつつ、ワープロの練習を兼ねて日記をつけている主婦・向井洵子。彼女の周辺で奇妙な出来事が起こり始める。誰かが彼女を狙っている?それともおかしいのは洵子のほう?次々にあらわれる矛盾。混乱。殺されたのは誰?一体なにが起こっているの!?

最高におもしろいです。読み出したら途中やめるなんで絶対にできない。就寝前の読書用には決してしてはいけません。

この手の話は結構多いし、中盤から結末の予想はなんとなくつくけど、高幡英世まで・・・だったとは思わなかった!
そしてファイル54のページ、すごく効いてて深い余韻へとつながっている。ここを埋めるべきなのは、読んでいるあなたかもしれない・・・。いいね!うまいね!作者の手腕に感動してにんまりしてしまう。

文章のテンポがよく、読んでいて気持ちがいいので、結末を知っていても何度も読み返してしまう本です。
いざ混乱の中へ
序盤から、読めば読むほど混乱してくる厭らしい展開で、何が真実なのか、誰が
何をしているのか、自分が馬鹿になってしまったような錯覚に陥ってしまいます。
中盤過ぎに明らかになるひとつの事実によって、謎が氷解していきますが、最後
までテンションは下がることなく続きます。
お約束といえばお約束のメイントリックですが、最初から最後まで良く考えら
れた作品です。
衝撃の結末!
1枚のフロッピイディスクの中に様々な人間のファイルが収められていて、読者がそれを読んでいくという形で物語が進行していく。はたしてだれがどんな目的で事件を起こしたのか?しだいに真実が明らかになるとき、意外な展開に読者はきっと、あっというに違いない。結末は・・・どうか自分の目で確かめてください。

クリスマスの4人 (光文社文庫) クリスマスの4人 (光文社文庫)
井上 夢人   光文社   光文社  
へぇ
 読み終わったとき「やられた!」という感は確かに残ります。
 それでも騙された、化かされた、などのマイナスのイメージを抱くことは無く、ものすごく鮮やかに怪盗に宝石を奪われた博物館の館長さん(ダレだよ)の気分とでもいいましょうか。ですが勘のいい人なら第三区分あたりまで読んでしまえばどんな終わり方になるのかという想像ができてしまうと思います。
 この本はボクのように、推理小説を二回は読まないと話の筋道がわからないぐらいの人にオススメしたいと思います。
一読の価値あり
20歳のクリスマスの夜、4人は誤って人を車で轢き殺し逃げてしまう。秘密を共有する4人が10年毎にクリスマスに再会。再会の度にさらに過去の秘密に関係する事態が発生し、謎が深まっていく....。実を言うと、途中で謎の核心に気づいてしまいました。また、研究室で恋人と事に及んでいたからあーなってこーなったという謎解きの一つにはちょっと首を傾げたくなります(普通、いくら何でも仕事先でそんなことしませんよね)。その点からいえば、岡嶋二人ファンにとっては少し物足りないかも。

パワー・オフ (集英社文庫) パワー・オフ (集英社文庫)
井上 夢人   集英社   集英社  
初出の日付に注目
本書は、1994年8月に雑誌掲載されている。レビューアーの記憶が確かなら、PC9801とAT互換機(いわゆるDOS/Vパソコン)がしのぎを削っていた時代の事だ。コンピュータウイルス等というものは、ほとんど存在しないし、インターネットなんてものは一般の人は全く知らないような、そんな時代だった。「コンピュータウイルスって、人間に感染するの?」という素朴な主婦の会話をレビューアが喫茶店で小耳に挟んだのは本書の初稿が雑誌に載ってから数年も後の話である。そして、今なお、知っている人に言わせればとんちんかんな「コンピュータウイルスって、子供にうつる?」という疑問はポピュラーなのである。さてさて、井上夢人氏の作品はレビューを書くのが難しい。なぜなら、少しでも内容に踏み込もうものなら、一部の読者から「ネタバレだー」とのクレームが届くだろうし、かといって全く内容に踏み込まないのではレビューにならない。そこで、ちょっと工夫を凝らして解説に踏み込む事にする。
 本書の解説は、当時月刊アスキーの編集長をされていた遠藤氏が書かれている。小説の解説を、コンピュータ雑誌の編集長が書く、というのはおそらくは異例の事だろう。折しも今年、アスキーはコンピュータ雑誌を卒業し、ビジネス紙として生まれ変わるそうだが、井上夢人氏の描くコンピュータは現在のコンピューティング技術の最高峰を持って到達しうるかどうか微妙な点に常にいる。岡嶋二人名義の作品ではあるが、「99%の誘拐」とほぼ同じトリックが実現できるようになったのはここ数年の事なのである。パワーオフの世界を一般の人が本質的に感じる事が出来るようになるまでに後何年の月日が必要になるのか。コンピュータ業界の末席に座る身としては頭が下がる思いである。
現在でも通用するもの
この作品が連載されていたのが94年、単行本として発行されたのが96年だから既に10年近く前の作品ということになる。機種などを含めたインフラ関係が古く写るのは致し方あるまい。

この作品で扱われているのは、ネットワークを通じて繁殖するコンピュータウィルス。これだけ古い作品でありながら、その対応に追われる人々、反応などは共通するものがあり、同じくコンピュータを扱う(と言っても、ネットをしたりするだけだが)立場で見て共感できた。オンライン小説を主催するなどして、深く関わっている著者だからこそ書けたのだろうな、と思う。

ただ、自ら繁殖し、進化するウィルスという辺りは、(今後できるかも知れないが)現段階では、SF的なイメージから抜けられず、SFとしてはやや現実的すぎるきらいがある。その辺りがどうか・・・。
コンピュータウイルスについて知らなくても大丈夫
コンピュータの詳しい知識なんかなくても十分楽しめます。
読後には考えさせられる部分が沢山あります。

パラサイトイブを読んでおくと、面白さが深まると思います。
出だしの「コンピュータウイルスによって怪我をする」エピソードによって、すぐに小説の世界にひきこまれていくでしょう。
とても十年前の話とは思えません
この物語は、今現在発生しているウィルス騒動を十年も前に予見していたかのような物語です。
インターネット等今ほど一般に知られておらずパソコン通信で個々のコンピュータが繋がっていたころに書かれていたにも関わらずいま読んでも決して遜色の無い物語であることは間違いないでしょう。
お勧めです
スイスイ読める。
旧ニフティなどの商用ネットワーク全盛期からインターネットへの移行が始まる頃
の話しだと思うけど、2003年の今と大きく変わったのはインフラだけのような気がする。
こんなウィルスがあったら今でも対処できないだろうし。また3年後くらいに読んでみる
と、状況が変わっていて面白いかも知れない。文庫で600ページ近くあるけれど、

頭からっぽにしてスイスイ読めちゃいます。


メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫) メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
なんだ、ホラーか。
すっげー、
夢中になって読みました。

これだけの謎を、
どう、
解決するんだろう。
って。

で、
結果・・・解決しませんでした。
合理的な説明は一切なし。

SFホラーでした。
そうじゃないと思って読んだたから、
がっかりでした。
最後の方まで、
まさか、このままじゃない、よね。
と思ってたんだけど、
そのままでした。

ん〜、残念。

つまり、
発送や展開は上手でしたけど、
どうしてそうなったのか、
ということはどうでも良かったんですね。
気を持たせる書き方が、
余計に腹立たしかったかな。

ホラー好きなら、楽しめるかも。
欲求不満が残る。
岡嶋二人作品にすっかり魅せられてしまっているのですが、合作作家「岡嶋二人」の一人、井上夢人の作品ということで迷わず購入した一冊です。

「メドゥサを見た。」と言うダイイングメッセージを残し不可解な死に方をした作家 藤井陽造の遺作を探す為に、主人公が遺作の舞台になったと思われる町へ赴きます。

次々と明らかになってくる奇妙な出来事に、ぐいぐいと引き込まれていきます。
主人公が名前を思い出せなくなった場面では、主人公の名前は分っていると思っていた私自身もすっかり困惑し読み終えたページを読み返してしまいました。

もうこの辺りでは、どんなどんでん返しがあるのか期待は最高潮に達していたのですが....。

あれれ。

仕掛けやアイディアは、岡嶋二人作品と同様に超一流なのですが、本作品の場合は盛り上げるだけ盛り上げておいて後半が尻すぼみになる為、絶景を期待して登山をしたら、途中から見晴らしが段々良くなっていたのに、頂上に着いたと思ったら標高が下がっていた、という感じでしょうか。

飽きることなく一気に読めてしまうのですが、欲求不満の残る作品です。

失敗作
作者が自分で張った伏線や仕掛けを収束させられず空中分解してしまったので、
ありがちで安っぽいホラー描写や人格・時制の混乱、メタフィクションなどの
ハッタリをかましながら、必死に誤魔化しているだけの無残な失敗作だと思う。

「メドゥサ」という魅力的なキーワードに作者自身が雁字搦めになっている。
この扱いにくい言葉を作中に何とか捻り出すために用意されたエピソードの
何と嘘臭くて悪趣味で無理矢理なことか。恐怖や悲惨以前に滑稽ですらある。
万が一、あの登場人物が恨みから化けて出るとしたら、それは作中ではなく、
こんなトンデモ話をでっちあげた作者・井上夢人の前にこそであろう。

「王様は裸だ」ではないが、ここで高得点をつけるレビュワーの多くが挙げる
「途中まで真相が分からず最後までぐいぐい引き込まれる」というのは本当か?
この程度の見え見えの人格錯綜の仕掛けが見抜けぬほど読者はナイーブなのか?
私は逆に、随所でここまで分かりやすいほのめかしをしてくるのは、最後に
度肝を抜くドンデン返しが用意されているからでは…と勘ぐって読んでいたが、
ほのめかし通りの展開にしかならなかったので、別の意味でびっくりした。
その意味でもファンとは本当にありがたいものだが、生憎と私はこの作者に
ほとんど思い入れがないので率直にいう。羊頭狗肉もいいところだった。
ホラーだからミステリとしては三流でもいいなどという免罪符はない。
「合理的な解決を敢えて放棄した」のではなく、もっと単純に
「意余って力足りず解決できなかった」だけのことではないだろうか。

この作品だけと信じたい
井上夢人の作品としては完全な失敗作。

ラストまで一気呵成に読ませる筆力は相変わらずたいしたもの。途中で退屈することは一切無い。
主人公が体験する異常なる“何か”が、日常に潜む軋みとして現れ、次第に説明不能の恐ろしい状況へと拡大してゆくさまは、実に面白く、この謎を通じて我々をどのようなワンダーランドへと導いてくれるのかと、期待は高まるばかり。

だが、タブー云々の真相が語られるあたりから、雲行きが怪しくなっていく。
井上作品には珍しく、自分で広げた大風呂敷のたたみ方がわからなくなってしまったようで、時制と人称を混乱させるプアな手法に逃げた挙句、自分の作品に取り込まれるミイラ取りへとオチを収斂させてしまった。

超自然なるものを核とすることに異論があるわけではない。それはそれで全く構わないのだが、不合理なるもの説明不能なるものに、超自然ならば超自然なりの整合性をもたらすことこそが、井上夢人に読者が期待することであろう。

そういう意味では、全くの期待はずれの作品である。

・・面白ければそれでよい?・・

ひょっとして井上夢人を買いかぶっているだけなのか?だとしたら非常に残念だ。
めちゃくちゃ怖いんだけど・・・
いきなり謎の死から始まり、謎が謎を呼び、序盤から中盤にかけてのおもしろさはハンパじゃないです。グイグイ引き込まれ、読むのをやめられません。しかし後半にかけて?な部分がだんだん多くなり、ラストを読んでしまうとがっかりです・・・結局謎は謎のまま、曖昧な部分が曖昧なまま残りすぎて、なんとも納得できません。ツジツマとかどうでもいいからとにかく怖い小説がいいという人にはオススメです。かなり怖いですよ。

オルファクトグラム〈上〉 (講談社文庫) オルファクトグラム〈上〉 (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
忘れられなかった物語
姉の殺害事件をきっかけに、後遺症で犬並みの嗅覚を持った
主人公が、'嗅覚'で犯人を追っていく・・・

設定だけで、斬新で魅力的。
単行本発売時に雑誌にっていた載ったわずかな紹介文の記憶
だけを頼りに、タイトルも作者すらわからないまま、
ずっと探し続けていた本でした。
そして、諦めずに探し続けた甲斐があったと感じた1冊です。

ミステリーとしてのストーリーもさることながら、
五感の一つである嗅覚をここまで文字で表現した
小説があるだろうか?というくらい、
目で見ることのできない、言語化しにくい感覚を
全編に渡って独特の表現で味わうことのできる稀有な作品。

ぐいぐい進むストーリーを追いかけながら、
普段無意識に使っている嗅覚という感覚を、
文章で味わうという快感。

文庫でも上下巻にわたる長編ながら、
一気に読めてしまうこと請け合いです。
最後の最後まで結末がわからない、
そして、安易な大団円には納まらない。
どこか切ないラストも含めて、ずっと手元に置いておきたい本。
井上夢人の作り上げた匂いの世界
井上夢人著 『オルファクトグラム』を読んだ。全編『匂い』に満ち満ちている。
ある日突然、犬かそれ以上の嗅覚をもってしまった主人公が殺人犯を追いつめるという、一応ミステリー仕立てとなっている。
岡嶋二人の片割れである井上夢人のミステリーは、プロット自体は新奇性もあってとても面白いのだが、往々にしてプロットを楽しむためだけに文字面を追っているように感じられることがある。まるであらすじを読んでいるようなプラスティック的な文体。
(そう言いながらしょっちゅう読んでいるということは一応私はファンと言えるのだろうが)
しかし、この作品に関しては、ミステリーとしての筋立ては平凡ながら、匂いの世界を、嗅覚を視覚に変えるという特殊な手段で、並々ならぬ美しいものに描き出すことに成功している。主人公の恋人に対する愛情も匂いの表現を通して確かに感じられた。
犬は人間の1億倍の嗅覚をもつというのに、なぜ臭い匂いを嗅いでも悶絶死しないのだろうか、というのが私の長年の疑問であった。
だが、この作品を読んで、その疑問は三ツ矢サイダーの泡のように消え去ってしまった。 犬にとって、匂いは臭いとか臭くないとかの問題じゃない。“すべてを知ること”なんだ。
主人公には、“匂い”が見える。美しい色と形をもった粒子としての匂い。恋人の匂い。友達の匂い。みんな違う形と色をしている。間違えることなんてない。その人の今の感情だって匂いの変化でわかる。風は美しい匂いの渦となって、動いているのが見えるんだ。
すべて作者の創造の世界ながら、十分な説得力で匂いの粒子の世界を旅させていただいた。
嗅覚
姉を殺した犯人に殴られ、目がさめた片桐稔は、異常な嗅覚を持つこととなった。犬のように僅かな臭いをかぎわけ、しかも、それを視覚的に(?)感じることができる。稔はその嗅覚を持って、失踪した同じバンドのメンバーと姉を殺した犯人を探そうと試みる。

とりあえず、上巻を読んだ時点での感想。
異常な臭覚を持ってしまった稔の戸惑い。臭いだけで、モノがわかってしまうこと。そのために、周りから奇異に見られてしまう行動…。そんな様子が比較的コミカルに描かれている。ところどころ、事件を起こしている「彼」の描写があるし、事件そのものはややエグい感じはするのだが、稔の方のコミカルなやりとりのおかげか、そんなにそれを感じることなく読んでいけた。
とはいえ、上巻では事件の真相などは全くわからないし、稔と「彼」がどう結びつくのか、犯人とバンド仲間の失踪がどう結びつくのかは全く不明。これがどう言う風になるのか注目したい。
一気に読めるほど面白かった!
 上下巻揃うと結構な分量であるのだけど、共に勢いに乗って一晩で読み終わることができました。主人公は犯人に暴行を受け、意識を取り戻した時には犬以上の嗅覚を持つようになり、事件とのかかわりを深めていくのだけど、そのかかわり方や、鋭い嗅覚がもたらす世界観が興味深いです。事件解決のための推理ものではなく、どちらかというと物語としての展開が楽しめます。またなんとなく物悲しさが漂うような、そんなお話でした(といっても、イヤな感じの終わり方ではないですよ!)。


もつれっぱなし (講談社文庫) もつれっぱなし (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
さりげなくすごい
ふたりの男女の会話のみで構成された短編集.

紹介文などでもこの『会話のみ』という部分が強調されていて,
どれだけ珍しいことなのだろうと読み出してみたのですが,
特に変わった印象はなくさらりと読むことができました.

が,これは騒ぐほどたいしたものではないということではなく,
珍しい手法にも関わらず,それを意識させないということなのですね.

状況の描写も第三者ではなく,ふたりの会話の中で説明がされるのですが,
『いかにも』的な印象がまったくなく,自然とその世界がイメージされます.

短編ということもあり,テーマはさまざま.
作品が古いため,SFテイストのものでは目新しい印象に欠けますが,
逆に発表時期を考えれば,小道具なども含めて非常によく練られています.

ただ,多くの作品のお終いがフェイドアウト気味に終わっていくのが残念です.
明るいものはまだしも,シリアスなものまでぼかしたまま終わってしまい,
「それははっきりと結論を出さないと!」というもやもや感が少し.

それでも,実験的な作品なのにそれを感じさせないのはおみごと.
逆にこれに気づけないと『普通』の作品で終わってしまうかもしれません.

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫) おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)
井上 夢人   講談社   講談社  
胸躍り、やがて悲しき二人のお話
プロのミステリー作家になるのがいかに大変かがわかる。
アイデアで一儲けできないかという徳山諄一と、結婚し子供もでき定職を持ちたいという井上夢人のコンビが、乱歩賞をとれれば金持ちになれるという誤った(?)思いこみで、賞取りに挑戦する。落選に落選を重ね、5年間にわたって挑む。その熱意と持続力はすごい。
この受賞までの、盛衰記の「盛」の部分は躍動していて、面白い。
受賞作、「焦茶色のパステル」の創作アイデアが実作になるまでも、細かく書かれており、ミステリー作家を目指すものには参考になる。
さて、プロのなってから、アイデア提出の遅い徳山に、井上は悩まされるが、競馬やボクシングなどに精通し、無から有を産む徳山のアイデアの原石があったからこそ、岡嶋二人の傑作が生み出されたのだと思う。
同時に、アイデア、トリックだけではミステリー小説はできない。ミステリーの醍醐味は、トリックそのものでなく、それを解いていく過程にある。効果的なプロットを組み立て、伏線をはり、動機を作り、いかに解決するかを考え、実際の文章にするには、ものすごい技術と根気がいる。ここは、井上の才能があったればこそだろう。
その二人の才能が、すれ違い出し、破局にいたる「衰」の部分は、本当に悲しい。
二人の、話し合いと分業がうまくいった最後の合作でもあり、岡嶋の最高傑作の一つ「99%の誘拐」を改めて読み返してみたくなった。(それと、実質的に井上が1人で書いたとう「クラインの壺」も)

徳さんも大変だったんだろうなー
日本では数少ない二人の合作による推理作家『岡嶋二人』の誕生
から消滅までを綴ったエッセイ。
作者はコンビの片割れであった井上夢人氏。

合作というシステムを、徳山氏と井上氏の二人は作品の量産化
ではなく、質的向上という面で生かしていたのだと思う。
だからこそ岡嶋作品が今もなを根強い人気を持っているのだろう。

しかし、それゆえに二人の間の葛藤は激しかったのではないか。
その辺の事情を、作者の井上氏は赤裸々に、包み隠さず語っている。
これを読むと、井上氏も大変だったんだろうけど、徳さんも大変だった
んだろうなー、と思わずにはいられない。
残念ながら、徳山氏から見た文章は掲載されていないが。

個人的には、さらっと読める井上氏の文章のうまさだけでなく、
徳山諄一という『毒』があってこその岡嶋作品だと思う。

岡嶋二人のファンにはお勧めの一冊。
ただ、作品のネタバレがあるので、この本を読むのなら他の岡嶋
作品を読んでからにした方が良いだろう。
恋愛小説のような「二人」の物語
岡嶋二人・・・「おかしな二人」をもじってできた、井上夢人と徳山諄一のコンビ名(ペンネーム)。誕生から消滅まで、13年間の岡嶋二人物語。ノンフィクション的エッセイ。

文学青年でもなんでもない二人が、ただ一攫千金を夢見て、江戸川乱歩賞を狙う。
ずぶの素人が、全くのゼロから「読める小説」「おもしろい小説」をモノにしていくまでの過程は、小説作法としても読め、すごく興味深い。

また、二人が互いを補完しあい、刺激しあい、助けあうさまは、作品だけでなく二人の絆のようなものも、同時に作り上げていくように思えて、愛らしく微笑ましい。読みながらにこにこしてしまう。

だからよけいに、消滅にいたる「衰」の部は、悲しくやるせない。解説に大沢在昌氏も書いてあるが、本当に恋愛小説のようだと思った。

二人の人間が出会い、結びつき、別れる。そこに恋愛感情はなくても、深いところで関わり合いつながった関係は、恋愛に似た(もしかしたらそれ以上の)強い感情を生むものになるんだろう。

ラストの別れのシーンは、ちょっと放心してしまうくらい、せつない感動があった。
悲しい物語
岡島二人はエラリークイーンのように、二人で一人の作家であった。つまり合作ですね。そのコンビは解消されたのだが、その一人のうちの一人の作家。「おかしな二人」のアナグラムというか、パロディというかで「岡島二人」になった。彼らの小説を含め、井上氏の小説は、頭をシャッフルさせられるものが多く、気分転換に良い。これは、それのエッセイなのでいろいろな裏話。喧嘩アリ、恋慕ありと、なかなか読ませる。破局へ向かうことがわかっているレールってのは、すごく物悲しいゆえに、ひきつけられる。平家物語のように。
エッセイ風岡嶋二人ヒストリー
コンビ解消から10年以上経った今でも根強い人気を誇る岡嶋二人の歴史を振り返ったエッセイ。作者はコンビの一人、井上夢人。

結成時のエピソードからコンビ解消にいたるまでの二人の心の葛藤と仕事振りが細かく描写され、ほんとにこんなこと書いていいの?と思われるシーンの続出。単なる歴史を語るタイプの本ではなく、コンビという形を通して、個人個人というものがいかにエゴを持っているかを教えてくれる一冊です。一人で生きるのも辛いですが、二人で生きるのもそれはそれで難しいといった・・・

筆者の絶妙の筆致によっていやみなく二人の間に起こった様々な葛藤が描かれていきます。それはタイトルどおりまぎれもなく“おかしな二人”でした。

岡嶋二人の小説が人気があったのはストーリーが優れているだけでなく、その文章のうまさにもあったんだなあとこの本を読んで感じました。いまだに心に深く刻まれている一冊、文句なくオススメの作品です。


1   |   2   |   3   |   4   |   5      »      
合計件数:48  合計ページ数:5