一千一秒物語 (新潮文庫)
稲垣 足穂 新潮社 新潮社
「飛行」少年が、星くずを集めてびん詰にしたような作品群
解説によると、稲垣足穂は飛行家になりたかったらしい。
空にあこがれ、星を見ながら雲の間を複葉機で自在に飛び回る夢は叶わなかったが、
星や月や天空と、自分の心との距離とは空想力によって近づいたようだ。
…お月様なんて、少し近づけばすぐに手が届きそうだし、
あれだけたくさんの星ならば、1つくらい自分のすぐ横に落ちて来ても不思議じゃない。
…なんて感じで。
――夜更けの街の上に星がきれいであった たれもいなかったので 塀の上から星を三つ取った
−家へ帰ってポケットの中をしらべると 星はこなごなにくだけていた
Aという人がその粉をたねにして 翌日パンを三つこしらえた(「一千一秒物語」より)――
なぜ月は天空を回るのか?なぜ星はこんなにたくさん夜空に見えるのか?
人は知識として聞いて、わかったフリをしているだけ。
月がある、星がある、その存在だけで不思議な現象なのだから。
ほうき星がビールびんの中に入ったり、お月様を食べてみたりといった作中の現象も、
現実世界では遭遇したことはないかもしれないけど、
不思議な世界への扉は、ある日突然自分にだけ開くかもしれない。
自分さえ心を空に向かって開いてさえいれば、ね。
…そんな気分にさせてくれる本です。
夜更けの街角で宇宙を幻視する・・・
数あるタルホ作品の中でも僕が一番好きなのがこれです。ウィスキーを片手にこの本を読み、かつての神戸の夜を、あるいはプラハやエジンバラ、ダブリンあたりの街角を思いつつ、宇宙を幻視できるのは至福の一時でしょう。
そう言えば、『スモール・プラネット』のたむらしげるさんがイラストを描いた絵本版『一千一秒物語』も悪くないですね。星や月との語らいを想い、夜が待ち遠しくなってきます。もっとも、個人的にはイラストなしの方が想像力をかきたてられるけど・・・。
ちなみに所収の『星を売る店』の舞台は神戸の新開地。当時の新開地って今とは比べ物にならないくらいモダンでエキゾチックな街だったのでしょうね。
六月の夜の都会の空
想像力が豊かなとても優れた作家だというのは云うまでもありません。
ただ「美のはかなさ」などは引用も多く、私のような凡才には難解な点があり読解に苦労しました。
今も理解できているとは正直云えませんが「黄漠奇聞」や「弥勒」等は本当に魅力的で幻想的な作品です。
「一千一秒物語」はショート・ショート形式ですが星新一も認める作品です。これは"詩"として読んだ方が読み易いです。
「A感覚とV感覚」は所謂analとvaginaであり、その感覚の違いを説くのですが、
内容が哲学的な所為もあり、読み手にかなりの想像力が必要とされると思います。
2005年にはちくま文庫で「稲垣足穂コレクション」が発行されるようですので、
この書籍を読破しピンときた方はチェックしてみるといいかもしれません。
キラキラしたモダンな話の寄せ集め
実に作り物じみた装置が、ふんだんにちりばめられたおもちゃ箱のような作品です。なんともキラキラしたモダンな話。アップ・トゥ・デートというのではなく、あくまでもモダンです。心理学のユング派の先生が、日本では珍しい内向性感覚タイプの、まさにアダルト・ファンタジーであると何かに書いていました。
ぜんまいとか機械仕掛けとか、こんぺいとうなんて言葉を聞いて、意味が分からなくとも、なんかいいなって思える人は是非読んでください。稲垣さんは同性愛傾向を色々言われたりする作家ですが、文学的背景がしっかりした方だし、これはまさに珠玉の名作。
豊かな感性と日本語の美しさに浸れる
優れた作品を数多く生み出した稲垣足穂の世界は時間の空間が少し歪んでいるようでありながらもどこか居心地のよさがある。
作品の中にあらわれる言葉はどれも素敵で、日本語というのはこれほど美しい言葉に満ち溢れているのだな、と思いました。繊細な表現やウィットに富んだ会話、粋でもあるし、おちゃめでもある。
足穂の本を読む度に「この作品を読むことができ、日本人に生まれて本当によかった!」と嬉しくなります。
稲垣足穂をはじめて読む人にもおすすめの一冊です。
一千一秒物語―稲垣足穂コレクション〈1〉 (ちくま文庫)
稲垣 足穂 筑摩書房 筑摩書房
タルホが転ぶと月が出た
~私が本格的に文章を書き始めたのはここからでしょうか。
ポケットから転がり出た月はいったいどこへ行ったのでしょうか。
芸術家特有の二重性と不安定をこの作品によって慰められたのは一人だけではないはずです。
雨上がりの春先のような今夜にぴったりの作品集です。
そして、あなたの住む小都会の路地裏のアスファルトにも
夜半過ぎの月が映り込んで~~いるでしょう。~
一千一秒物語
稲垣 足穂 ブッキング ブッキング たむらしげる
夢を紡ぐ一千一秒物語
一千一秒物語は、1923年(関東大震災の年)の1月に金星堂から刊行された『稲垣足穂』の処女作品集でありますが、透土社発行の一篇一冊物語双書(初版本・旧仮名遣い)は、本文組版を写真製版で再現した本で手もとから離れる事無く繰り返し読んでいます。そうした大正ロマン溢れる文面もなかなか味わい深いものがありますが、この絵本は『たむらしげる』氏の個性的なイラストと現代風にアレンジされた文面が一服の絵と共に独特のフィーリングを醸しだしているエイジレスの絵本として素晴らしい出来と思います。イラストを味わいながら大正ロマンの心癒される文面で、今の世知辛い世の中の悪しき事を一瞬でも忘れさせてくれる、そんな夢を紡ぐ一千一秒物語!です。
最高のコンビ!
イメージにぴったり!これ程稲垣足穂の世界を表現出来るなんて!!感動しました。先ずは、絵本ではなく小説の『一千一秒物語』を読んで下さい。きっと“絵”として足穂を感じたくなりますから。そうしたらこの本を開いてください。
稲垣足穂の世界
おやすみ前のひと時に。
稲垣足穂とたむらしげる。この二人の融合から生み出される摩訶不思議な世界。まちにまった復刊です(復刊ドットコムで見事復刊!私も参加しました)。『銀河の魚』『ファンタズマゴリア』『クジラの跳躍』でファンになった方、いかにたむら氏が稲垣足穂から影響を受けたか、この本で確かめて見ませんか?
それではグッドナイト。
稲垣足穂コレクション2 (ちくま文庫)
稲垣 足穂 筑摩書房 筑摩書房
少年愛の美学―稲垣足穂コレクション〈5〉 (ちくま文庫)
稲垣 足穂 筑摩書房 筑摩書房 萩原 幸子
かなりまともな、ただし俗流フロイト論
本書は氏の随筆2点「少年愛の美学」および「A感覚とV感覚」を収録。
博覧強記と称すべき古今東西膨大な文献等を参照しつつ、そこに自身の体験や見聞を交えて、
(それぞれ性器の頭文字を意味する)「A感覚」「P感覚」「V感覚」を論じていく。
引用された資料だけでも相当に読み応えはあるし、ところどころに目を瞠るべき示唆も
含まれているには違いない。
しかし、その表題から想像されるだろう倒錯的な官能性という点からすれば、
かなり物足りない、というのが偽らざる本音。
良くも悪くも、まともな感性を持った人がまともに性を語ってみただけの一冊。
エロティシズムとしてはあまりに凡庸で、刺激に乏しい。
フロイトに大いに触発されて、それを土台としつつも、彼自身のことばでもって少年愛や
同性愛を再構成しようとした稲垣氏のその意図は十二分に伝わる。
ただし悲しいかな、あまりに普通で、背徳性や官能性に欠ける。
リビドーやらをめぐる言説にまつわるフロイトへの典型的な誤解も見受けられる。
分かってるな、と膝を打たされる点も見られるだけになおさら惜しい。
A感覚とV感覚 (河出文庫―稲垣足穂コレクション)
稲垣 足穂 河出書房新社 河出書房新社
人間人形時代
稲垣 足穂 工作舎 工作舎
稲垣足穂 (ちくま日本文学全集)
稲垣 足穂 筑摩書房 筑摩書房
「一千一秒物語」をモチーフにした表紙もいい感じですよ
わたしが稲垣足穂を初めて知り、そして好きになった本です。彼の代表作で要素も強い「一千一秒物語」が収録されているので、稲垣足穂の作品を何か読んでみたいと思っている方にお薦めします。多分、好きになった人はもっと読みたくなるでしょうから。……というか、好きにならなくても彼の美学と想像力には難解さも含めて脱帽はすると思いますよ。それくらい自由奔放に並べられた言葉たち。そして、少なからず感傷もついてきます。ぜひ星空・ヒコーキ・少年愛のきらめく世界に浸ってください。
(ちなみに私は「フェヴァリット」が好きです)
足穂拾遺物語
稲垣 足穂 青土社 青土社
装丁が美しい
とにかく装丁が美しい
カバーをはずすと煌く蝶の燐粉のような偏光性の表紙があります
トランプを模したデザインも美しい
収集家の本棚に並べる価値があります
稲垣足穂 [ちくま日本文学016] (ちくま日本文学 16)
稲垣 足穂 筑摩書房 筑摩書房
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