紫苑物語 (講談社文芸文庫) 紫苑物語 (講談社文芸文庫)
石川 淳   講談社   講談社  
元気出ます
 日本の小説の中では、これほどの美文に出会ったことがない。個人的には、谷崎も三島もこれに及ばない。また、これほど読み返したい文学もあまりない。なんでこんなに魅力的なのか、とつくづく思う。
 精神の運動。この作者は、精神の運動神経がいいんだろうか。私なんか怠け者なので、到底及ばない。すぐに分かることだが、漢字でなくてひらがなを駆使するところに、まずポイントがあるのだ。
 元気の出ない時に読むといいかもしれない。「狂風記」「普賢」などもお勧め。この人の該博に触れたいなら、ちくまで出している「石川淳評論選」がある。
 それにしても、「櫛風沐雨」という言葉がカッコイイ。
「紫苑物語」
この物語を紡いでいる文章は、読み手に無味乾燥な活字ではなく絵巻を目にしているかのようにさえ錯覚させる。短編ながら、様々な人間の生のあり方が描かれ、人間の営為についてを考えさせてくれる。
作者・石川淳のいう「運動」が主人公によって表現されきっている点でも高く評価できる逸品。
石川淳のhumanism
「ç'«è‹'物語」は、血è...¥ã„話だと言っていいだろう。登å '人物たちが次ã€...と誰かã‚'殺ã-、あるいは誰かに殺される。ã"れは、人é-"個人のç"Ÿå'½ã®å°ŠåŽ³ã¨ã„ã†ã€ç§ãŸã¡ã®æ™‚ä»£ã«ã¯ä¸æ-‡å¾‹ã§ã‚る価値観が認められるよりもずっと以前の時代ã‚'舞台とã-た物語なのである。ã-かã-そã"に表現された人é-"性の、å¦-ã-い美ã-さと激ã-さに人は衝æ'ƒã‚'隠せないはずだ。ã-かり、人é-"とは、ã"のようにも強いいきものであったのかと、æˆ'ã€...はæ°-づかされã-るã‚'えない。己ã‚'とり殺さã‚"とする物の怪の類ã‚'すら美ã-いと言い、é-¨ã«ä¾ã‚‰ã›ã¦æã‚Œã‚‹ã¨ã"ろのないã"の物語の主人å...¬ã¯ã€æ„šã‹ã§å‚²æ...¢ã§èº«ã®ç¨‹ã‚'知らぬかもã-れないã'れども、ã-かã-å...¨ãã«äººé-"的なのである。æ-¥æœ¬æ-‡å­¦ãŒç"Ÿã¿å‡ºã-た最もバイタリティ溢れる精神である石川淳の、最高å‚'作の一ã!¤!!とå'¼ã¶ã«ç›¸å¿œã-い。

石川淳短篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫) 石川淳短篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫)
石川 淳   筑摩書房   筑摩書房   菅野 昭正  
抜群のおもしろさ
小学生のとき以来、石川淳を読むのは久々なのだが、滅茶苦茶おもしろい。小説の企みが非情にうまい作家である。初期の芥川賞受賞作家ということだが、考えてみれば、綿矢りさとかいった名前だったと思うが、芥川賞受賞後、何年も書けない芥川賞受賞作家がごろごろいる。一例をあげれば大岡玲、松村栄子、その他もろもろ。また書いていても、つまらないのしか書けないのがさらにごろごろといる。してみれば芥川賞受賞作家というものはピンキリなんだということがよくわかる、それほどすごいのが今回の石川淳短篇小説選である。すごい作家は最初から最後まですごいし、駄目な作家は芥川賞受賞作品そのものも駄目なら、その後の作品もまともな芸術言語に達していない。松浦寿輝とか堀なんとかといった最近の受賞者も格好だけはまともだが、内実は下手な小説しか書けないし。芥川賞も受賞作なしということを実施しなければ、下手な三文小説家で日本文学はインフレを起こしてしまう、というかすでにインフレ。しょせん芥川賞も商業主義に毒されているにすぎず、まともな言語芸術の道案内の役から降りてしまっている。

普賢・佳人 (講談社文芸文庫) 普賢・佳人 (講談社文芸文庫)
石川 淳   講談社   講談社  
煩悶する世界
文は長く、重いが凄烈さもあり、きれもある。読めば読んだだけ味が出る作品とは、こんな作品であろう。もうすこし、熟成したあとで、読み返してみたい本である。「佳人」、「貧窮問答」、「葦手」、「普賢」の四編。初期の作品のようである。どれにも、怠惰で、好奇心もあるが、小心な著者が、悩み、のたうつ感じが出ていてよい。後期の作品も呼んでみたいところである。
初期名作集
 石川淳の芥川賞受賞となった「普賢」収録の講談社文芸文庫の作品集。石川淳といえば、文壇に於いて無視することは不可避なほどに影響力のあった人であるが、実際の彼の読者人口は少なく、未だこの作品を読んだことがないという人は多い。それは石川自身が「自分の読者は2000人」という発言からも伺える。とはいえ、間違いなく日本の文学史に名を残す名作であり、絶対に読まれることをお勧めする。
 何といっても、初期のこの所謂「饒舌体」というのが、好きだ。濃密で長い文体であるが、それでも全体がだらけない彼の凄みが満ち溢れている。東西に通じた和漢洋の知識というのも、読めば尊敬の念さえ称えたくなるほどの素晴らしいもので、まさに「これこそが小説だろ」と言わんばかりに圧倒的な魅力だ。

 本当に名作ですよ、これは。是非ともここから石川淳を読み、そして他の珠玉の作品群に大きく手を広げてみてください。きっと今まで体験したことのない読書体験があなたを待ってます。


諸国畸人伝 (中公文庫) 諸国畸人伝 (中公文庫)
石川 淳   中央公論新社   中央公論新社  
石川淳、畸人探訪
江戸末期から明治にかけての諸国の畸人たちを描いた文集。取り上げられるのは多芸多才な左官職人、漂白の果てのたれ死んだ俳人、堅忍にして風流も解した商人など十名(ただし補遺あり)。存命中の幸不幸・現在での有名無名は様々ながらどこか世の中からはみ出した人物たちについて、気ままな筆致で書き付けていく。現地に取材し文献や聞き取りを交えるが、評伝と言うほどではなく雑記帳の様相である。読者はのんびり肩の力を抜いて畸人雑知識が得られる。

畸人たちの人物と作物にのめりこむことなく一定の距離を置いていて、対象への思い入れを感じさせない。「句も書もいうにたりない」(p116)「じつにヘタクソな文句であった」(p146)といった具合。良く言えば突き放した乾いた評価だが、ならばなぜそんな人物を題材にしたのか、わざわざ一書をものしたのかと虚しさを覚える。しかも著者は実際に取材先から同趣旨を問われて「つまらぬことです」と笑って開き直っている(「武田石翁」p197)。結局は題名こそ畸人伝だが彼らをだしにした石川淳の自分語りエッセイ集。(なお坂口安吾の父阪口五峰を「どれもおそまつであった。完璧である。」と評したりするのは楽しい)

となれば肝心の石川の文章芸がどれほど楽しめるものかということだが、どうにも難がある。確かに透徹した視点はぶれを見せず、小技を利かせて諧謔を入れ快調に進めてはいる。漢籍古文の素養ゆえか簡明ながら密度が高い。学識とセンスの裏打ちを感じさせる。しかし残念なことに、長い。快調はだんだんと単調となり平板となりとぼけた風味が逆に鼻につくようになってくる。刈り込み不足。この作家の熱烈なファンでもない限りコストパフォーマンスは厳しくつけざるを得ない。星二つ。

石川淳評論選―石川淳コレクション (ちくま文庫) 石川淳評論選―石川淳コレクション (ちくま文庫)
石川 淳   筑摩書房   筑摩書房   菅野 昭正  

石川淳長篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫) 石川淳長篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫)
石川 淳   筑摩書房   筑摩書房   菅野 昭正  

狂風記 (上) (集英社文庫) 狂風記 (上) (集英社文庫)
石川 淳   集英社   集英社  
日本語と日本文学の、ひとつの頂点
~まずは冒頭の数行をぜひ読んでほしい。きっと驚くことだろう。ほんらいは旧字旧かなで書かれた作品だが、このスピード感、そして、ロックンロールのようなドライブ感。表現は斬新で、精確で、それでいて、なにより上質の日本語なのだ。
~~
はじめの数行が気に入ったら、さらに2、3ページ読んでみるといい、この展開のすごさ。即興のような勢いを保ちながらも、一行一行、たしかな思想と文章思考がまるで生き物のように自在に物語を運んでいく。文字の力は圧倒的で、これは石川淳を読む醍醐味でもある。注意しなくてはいけない。そこには書かれていないものがたくさん隠されているのだ。数十ページ~~分の思考内容が2、3行に収められていると思って読んだほうがいい。石川淳は、徹底的に推敲して、徹底的に省いていく作家だ。たんなるマゴとヒメの出会いのシーンだと思わないほうがいい。人間存在への深い洞察と批判精神が、強烈なちからで物語を規定している。どのシーンにも意味があるのだ。なぜゴミのなかから人間が出てくるのか、なぜ骨なのか、すべて意味~~があるのだ。それがそのまま類いまれな詩心へと通じていく。
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石川淳はもともと日本語の名手として知られており、あの『折々のうた』で知られる大岡信が大先輩として一目置いていたほどだ。そんな大家が、晩年になって、これほどの実験と冒険心に満ちたロックオペラさながらの作品を仕上げてみせたのだから、わたしはこれを読んだ十代のころ、ずいぶん興奮したものだ。すごい作家がいたものだ。しかも、これだけオシャレ~~でブッ飛んでおりながら、それがしっかり日本語の伝統に根ざしていて、上質の日本文学として成立している。むしろ周りの若者がなかなかついていけなくて、評判が遅れ気味になったくらいだ。
~~
石川淳はこの大作を十年にわたって書いた。まいにち、自らの文章を音読して(わりと大きな声でしっかり音読していたらしい)は書き直し、音読をかさねては書き直し、何度もやり直して、そうやって一日数行ずつ書き継いでいって、十年かけて完成させたのだ。
~~
美しい文章などいくらでも書けるような日本語の名手が、一行一行に勝負をかけて、そうやってできたこの作品は、いまだに前衛的で、内容もすごい。人間の命がそのまま息づいているような迫力がある。~

焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫) 焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫)
石川 淳   講談社   講談社  

ちくま日本文学全集 (011) ちくま日本文学全集 (011)
石川 淳   筑摩書房   筑摩書房  

狂風記 (下) (集英社文庫) 狂風記 (下) (集英社文庫)
石川 淳   集英社   集英社  
挑発的
いまのご時世、老若に係わらずここまで書ける人がいるだろうか。
古き良きでくくってしまうと、なにやら古典の列に加えられそうだが、
これは古典じゃなくて、今も文学の前のほうを走ってる気がする。
狂うほどに美しい
人間の心底に潜む狂気や汚い部分を露呈した書である。そして、今の時代の人間たちがまさしく血迷っている中、自分のルーツを探る人間が主人公であることで、共感を覚えるものも多いのではないか。狂気の中に人間の苦しみ、悶え、そして光が混在しているところが奥の深い。

1つの文章が1ページほども続くほど、長いのにも関わらずスーッと情景が脳裡に飛び込んでくる。複雑な比喩が入り乱れており「古きよき書」と言った感じだ。


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