井沢元彦の英雄の世界史 (廣済堂文庫 イ 11-1)
井沢 元彦 廣済堂出版 廣済堂出版
読みやすい
井沢元彦さんの作品と言うと、日本史がほとんどなのだが、逆説の日本史でも散々述べられている通り、日本史だけという狭い視野にとらわれず、グローバルな視点で歴史を書いています。この著書は世界史に出てくる有名な英雄について書かれているが、井沢作品は相変わらず分かりやすいし、読みやすいです。文章が上手いのでしょう。歴史本初心者でも軽く入っていけます。それぞれの英雄について5ページ程度で書かれていて、さくさく読める。個人的にはサラディンや岳飛のところがよかったです。もちろんシーザーとかアレクサンドロス大王、朱元璋や織田信長などなど、全部良かったんですが(笑)。あと、三国志の英雄(曹操、劉備、孫権)のところなんか、「三国に分かれたんだから、こいつらはみんなたいしたことなかったんだろう」というところは、なかなか辛らつで笑えました。歴史に少しでも興味のある人にはぜひおすすめの本です。
封印された日本史
井沢 元彦 ベストセラーズ ベストセラーズ
「生類憐れみ令」の意義
この著者ならではのユニークな歴史観が披露されている。
徳川綱吉が「生類憐れみ令」を出した理由(もちろん著者の推測だが)を明らかにしたのが特筆すべき点か。彼は異常だった、とする以外、この件に関して納得できる説明をした人を私は他に知らない。
「生類憐れみ令」こそ、日本始まって以来の平和と繁栄の時代―元禄時代を支えた大きな柱だったのかもしれないのである。
英傑の日本史 上杉越後軍団編
井沢 元彦 角川学芸出版 角川学芸出版
逆説の日本史 12 近世暁光編 (12) (小学館文庫 い 1-21)
井沢 元彦 小学館 小学館
家康を大まかに理解するには絶好
いつも楽しみにしているこのシリーズ。
ついに家康まで来た。
面白かったが、正直新味に乏しい印象で物足りない感もある。
しかしそれはよく考えみると、シリーズを通して井沢的歴史の見方になじんできて、
それが僕の中で当たり前になったからかもしれない。
ダイジェスト版「家康」
秀吉に続いて家康。「逆説」を標榜する本シリーズにとっては増々苦しいテーマとなったが、予想以上に凡庸な出来。
"関ヶ原の戦い"から"豊臣滅亡"までは史実の通りで、何の新規性もない。山岡荘八氏の「徳川家康」のダイジェスト版のようである。豊臣vs徳川の闘いで、陰で重要な役割を果たした北政所(おね)をもっと深く掘り下げる等、工夫の仕方があったのでないか。淀の君への嫉妬とか、家康の人物を買っていたとかの通り一編の説明では、納得しかねる行動だったと思うのだが。徳川時代になってからは、浪人問題、宗教問題、差別問題等について語られるが、対象が家康なのか幕藩体制なのか曖昧としていて論点が不明確である。このためか、前半は全く見られなかった現代を舞台にした小話が語られるが、本に書く程の内容とは思えない。特に、朱子学と幕府滅亡の関係については吉田松陰の登場を待つ必要があるので、本編で概論を論じてもピンと来ない。
その生涯と業績、性向が知られた人物を相手に「逆説」を述べる事の難しさを痛感させる一作。
江戸時代の総設計士・徳川家康
このシリーズの前々巻が信長、前巻が秀吉、そして本巻が家康に焦点をあてたものであるから、日本史上のごく短期間に登場した個性的な英雄三人に一巻ずつ割り当てたことになる。しかし、各人の劇的な生涯、その事績、後世に与えた影響を考えると、三人にたっぷり頁を割くのは当然だ。
本作は三章からなり、第二章までがほぼ年代順に出来事を語る。第一章が関が原の合戦の勝利まで、第二章が江戸幕府開府から大阪夏の陣、家康の死までを、豊臣と徳川のどちらに味方するか迷う大名達の動静も交えて一気に書き下す。新しい知見は少なかったが、作者一流の論理的思考による謎解きも交えて、秀吉の死から家康の死までの緊迫の20年弱を手際よくまとめ、歴史の大きな流れを再認識させる。関が原の合戦の負け組が恨みを忘れないために儀式を行っていたことは初めて知った。家康は江戸幕府の創業者となるだけでなく、はからずもその滅亡の遠因を作ったのだから歴史は面白い。第三章は家康が自身の経験、そして信長、秀吉の観察から、徳川の天下が続くように考えつく限りの危機管理対策を行い磐石の体制を築いたことを詳細に述べる。大名だけでなく、朝廷、あるいは宗教勢力といった仮想敵に対して考え抜かれた政策の数々は圧巻で、本作の白眉と言っていいだろう。中でも、信長、秀吉から続く宗教勢力の無力化の総仕上げがどのようなものであったかは読んで確かめて下さい。日本が宗教紛争のない世界でもまれな国に変貌したのは彼ら三人の大きな功績で、その恩恵というか影響は現代の我々にも及んでいるのである。江戸時代の総設計士とでも言うべき家康だが、泰平の世が続く中で思わぬ制度の綻びが生じたことの指摘も見逃せない。最後はなぜ日本人は独裁を嫌うか、といった日本人論で幕を閉じる。広い視野で語られる日本通史、ますます快調だ。
徳川幕府に込められた想い
シリーズ12巻は、徳川幕府についてです。徳川家康と言う人は、「卑劣なやり方で豊臣家を滅亡させた人」と言う評価が大半でしょうが、そう言ったイメージを本書ではバッサリと切り捨て、この施策があったからこそ後の、天下太平が200年以上も続いたのだと説きます。
このような見方を裏付けるための論理構築は著者ならではで、今までの歴史学者が誰も出来得なかったものです。
同時に山内一豊が実は無能な政治家であったことや、真田昌幸がとても優秀な武将であった事など、今までの歴史書には描かれていない戦国の人物史も、とても興味深く読めました。
家康がどれほど優秀な戦略家だったのかは、幕府が200年以上も続いた事からも明らかですが、それが幕府設立当初に実施した様々な施策が効果的だった事、そして図らずもそれらの施策が、熟成された結果明治維新と言う倒幕につながった事など、歴史と言うモノがどれほど奥深く連綿と生々流転しているかを知る事ができます。
家康再発見の書
関ヶ原合戦から、江戸幕府を成立させ豊臣家を滅ぼし、家康が世を去るのと前後して幕府のレールを敷き終えるあたりまでが書かれています。
信長などに比べれば家康はどうしても「地味な人」のイメージを抱きがちですが、中身を読んでいくと天下を取るまでにはやはり様々な権謀術数があったことがわかり、読んでいて飽きません。昔は私も家康は「汚い」手段で豊臣家から天下を奪ったと思っていましたが、この巻を読んで「家康にも理由があったのだ」ということがよくわかるようになりました。
関ヶ原合戦の帰趨や、豊臣家の滅亡、幕府成立後の大名や公家そして寺社勢力の統制まで、著者もよく言うように現代に生きる私達は歴史の解答を知っているので、そうなるのが当然のように考えてしまいがちですが、長く続いた戦乱の世が終わり戦のない新たな世の中へと180度の転換をしていくスタートラインで、こうした盤石の体制をすでに完璧に整備していたというのは物凄いことだと思います。これによって徳川の世が200年以上続くわけですから、家康の深謀遠慮たるや本当に驚嘆に値すると言えるでしょう。
それでも、考えに考え抜いた完璧な方策が最後には裏目に作用してしまうというのも皮肉と言うかわからないと言うか、そこがまた歴史の面白さなのでしょう。
こういうのを学校の教科書ではほんの僅かなページでスルーしてしまっているのが、止むを得ないとはいえ全く勿体ないと感じますが、でもだからこそこのシリーズが読めるのは本当に有難いことだと思います。
井沢式「日本史入門」講座 3 天武系VS天智系/天皇家交代と (3)
井沢 元彦 徳間書店 徳間書店
ふーむ、なるほど。
実証主義の誤りとして「中日ドラゴンズの定理」が面白かった。
中日の愛称がなぜドラゴンズになったというと、当時の社長が辰年だったから。
本にそう書いてあるが、かといって阪神の社長が寅年だったかというとそうではない。
史料には特殊なことが記録されるのだ。史料のみが歴史の証拠だ、というと真実を見誤
るということ。
日本人は無宗教というよりも(山本七平が言う)日本教。日本の仏教は出家しなくても
いい。例えて言うと日本教は鍋のようなものだという。いろいろな材料が入っているけ
れども日本教という鍋の中で煮ると全部1つのものになる。
以上のようななかなか興味深い発見があった。
目から鱗を落としながら、大脳新皮質で納得できる良書
歴史推理の方法として、著者は実に明解な方法を前提としている。
彼は日本史の三大欠陥として
『実証主義の偏重』
『病的なほどの権威主義』
『宗教に対する無視』
を挙げている。著者はこれらを批判し、正史に偏らず、当時の人々の宗教観も視野に入れて読み解いていく。これが彼の方法論の前提である。
とくに序章に挙げられている「中日ドラゴンズの定理」は、その名前のいかがわしさとは裏腹に著者の歴史推理の基本的原理を簡単に明確に現わしている。とても読みやすくわかりやすい。このことは本文全体にも当てはまることである。
さて、本書では、大仏建立の真意・道鏡の実像・平安遷都・平安仏教成立・万葉集の謎といった奈良時代から平安時代初期頃までに起きた事物・事柄を、先に挙げた前提に基づいて、きわめて平易な文章で謎といてくれる。その謎解きは論理的に明解である。と同時に既存の歴史解釈とは異なる鮮やかなさばきっぷりに新鮮な謎解きへの躍動感と解明の斬新さへの驚嘆が心の中で交叉する。言うなれば、正統な原理に基づいた歴史書としても読めるし、わくわくどきどきしながら読める平易な歴史本として活用することもできる。
簡単な文章で歴史解釈を紐解いてくれる人はざらにはいない。本書はまさにその名のとおり、日本史、否、歴史への入門として最適の書籍である。目から鱗を出しながら、きちんと大脳新皮質(論理的)でも納得できる良書。
歴史は多角的に見て、史観を構築すべき
著者がよく口にしている日本の歴史学界に対する苦言は、
<1>日本の学界には「通史(日本史全体)」を扱う人がいない。
<2>当時の日本人の宗教観を無視する。
であり、もう一つ重要視するのは、当たり前のことではあるが、<3>「歴史は勝者が作る」というもの。
<1>を思えば、○○事件や○○文化を専門とする歴史学者はいても、近代史はおろか○○時代を専門とする歴史学者すらいないのでは、と思わせるほど、私の本棚に並ぶ歴史本の多くの著者は「歴史学者」ではないことに気付く。
本書は<3>の視点から、天武系最後の天皇となったためか(?)、悪評の立つ称徳天皇に大きくスポットを当て、<2>の視点から当時の日本人の宗教観で推論している。
これまで、学会の欠陥からか、あまりスポットを当てられなかった視点で描く著者の史観は、時に「それはちょっと深読みしすぎ」と疑問を感じることもあるが、いろんな視点で歴史を学びたい人にとっては非常に参考になり、また、読みやすくわかりやすく書かれているため、ついつい惹かれてしまう。
本書は、個人的に知識が疎い奈良・平安時代を扱ったものであるため非常に参考になり面白かった。
ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 (徳間文庫)
井沢 元彦 徳間書店 徳間書店
日本人には実感し難い一神教の世界を知る
日本人は一般に「宗教(問題)にうとい」と言われる。私などはその意味ではさしずめ典型的な日本人の一人で、日常的には宗教(団体、施設など)とは、その必要があるとき−−例えば葬式とか−−だけ、最小限つきあっていれば、それですむものと長年にわたって思ってきた。
そんなわけで、地球上には日本のそんな常識(?)とはまったくことなる原理で動く世界があることは漠然と知ってはいても(中東での長年の紛争とか、あの9.11の衝撃的な事件とか)、その原因や背景について、個別的・断片的な分析や解説を聞いただけでは、その対立の根本的な原因や経緯を理解することはかなり困難である。
今日、世界の人口の過半数は、ユダヤ、キリスト、イスラムの[一神教]の支配する世界の住人と言われる。一神教とは文字どおり「万物の創造主」たる唯一・絶対の神が世界を支配するとする教義で成り立つ宗教であり、したがって彼らが信仰する以外の“神”の存在を認めないとする、きわめて不寛容・偏狭で排他的な性格を有することになる。
このため、ユダヤ、キリスト、イスラムの3宗教は同じ一神教でありながら(あるがゆえに?)、それぞれが自己の信仰する神こそが正当なる(?)“神”であり、他は邪教であるとして、数世紀にもわたって深刻な対立と時に凄惨な虐殺を含む抗争を続けてきた。
本書は、私のような一般的日本人には実感することが難しいこれら一神教の世界について、それぞれの成立の経緯と教義の要点、さらに対立の根幹などについて、広く、かつ順を追って体系的に、そして何よりもわかりやすく解説したものであり、人類の歴史・文化のみならず、今日の現実の政治・外交・軍事などについて、宗教の存在がいかに深く関わっているかを認識する上で格好の手引書と言える。
何よりも好ましいのは、著者の井沢元彦氏が、これらいずれの宗教からも一定の距離を置いた客観的なスタンスで論を進めていることで、この点は、どの宗教かにかかわらず、外在的な立場から知識を得たいとする一般の多数の読者にとっては非常に有益な姿勢と言える。
一般に、ある宗教について客観的な知識や理解を得たいと思って、その当該の宗教に身を置く宗教家の著したものを読んだり話を聞いたりしても、有益な認識を得られる機会はほとんどない。それは、宗教家というものは、彼らが属する宗教の教義を当然前提として自己の属する宗教の美化や礼賛、あるいは自己弁護・合理化で論を構成するからで、この点については、本書に収録されているユダヤ、キリスト、イスラムのそれぞれの代表者(代弁者?)の主張にも明白に表われている。
宗教について広い博識と深い洞察を持つ井沢元彦氏にして初めて可能な、極めて示唆に富んだ有益な書である。
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の相違点、共通点
第一部には、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教がどうのようにして生まれたかが書いてあるが、これが非常にわかりやすい。
第二部では、著者が各宗教の代弁者にインタビューを行っているが、著者の質問の仕方がうまく、代弁者もそれに真摯に答えているので、それぞれの言い分がよく判る。個人的な意見としては、懐の深さが一番足りないのはキリスト教のような気がする。
ユダヤ教・キリスト教に共通点が多く、イスラム教はそれらに比べるてかなり異質なものだと思っていたが、三位一体の否定はユダヤ教・イスラム教で共通するといった風に、そう単純でないこともよく判った。良書。
見えなかったコトが見えてくる
目から鱗とは、このことでしょう。
今まで理解できなかった事が、
解らなかった事が明確になり、
見えなかったコトが見えてきました。
それぞれの立場の人たちとの対談は、興味深かったです。
また、圧倒されたのは、本の最後に紹介された友人からの
メール。ここでは書きませんが、興味のある方は
読んで見てください。
絶対お薦めの1冊です。
日本人が疎い世界の宗教の常識を知る良著
私自身、正月は神社に参拝し、結婚式はキリスト式に、葬式は仏教で.という宗教感覚に乏しい典型的な日本人であるが、そのような素人にも非常に解り易く一神教の歴史・主張を説いてくれている名著。正直、今までの自分の無知を恥じると共に目から鱗が落ちました。ありがとう、井沢センセイ!
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の対立を分かりやすく説明
本来、人を救うべき宗教が、何故かお互いに反目し、殺しあってしまう。
この現実が各々の宗教原則と反目しないのかが長年の私の疑問であった。
本書は、著者による各々の代弁者へのインタビューを中心に展開する。
そもそもの原因が、各々の宗教の起源に内在するということを理解した。
インタビューを通して著者は、ニュートラルなスタンスでかなり突っ込んだ
質問をしている。ここに著者のジャーナリストとしての真摯な姿勢を感じた。
怨霊と鎮魂の日本芸能史
井沢 元彦 檜書店 檜書店
逆説の日本史 15 近世改革編 (15)
井沢 元彦 小学館 小学館
宗春は名君か?
著者は吉宗はバカ殿であり、尾張の徳川宗春は名君であるという。宗春の開放政策は経済の一時的興隆をもたらすが、最終的には藩財政の破綻を招くことになる。民にすれば、一時はバブルに踊らされたものの、文化の発展の陰で享楽的風潮の蔓延、勤労意欲の低下、モラルの崩壊等の問題に直面せざるをえなかったであろう。そして、その後に味わわねばならなかった経済の混乱による苦しみは昭和・平成を生きた者には容易に理解できるでことである。将来の見通しもないまま、一国を運営した為政者によってもたらされた人心、経済への甚大な被害にも目を向けるべきではないか。
吉宗をバカ殿とするのにも賛成できない。現代の経済運営にあたって、学者や政治家が諸施策の有効性を論じても、最善の策を見出すことが困難なことを考えれば、未来永劫存続するはずの幕府の為政者に、唯一儒教だけが絶対の真理として存在していた時代に、その枠を飛び越えた画期的政策を実施しろというのは、イスラム教徒にコラーンにこだわるなというに等しい無理難題ではないのか。バカ殿、名君という分類が所詮無理なのであって、一般にいわれている、人物評に風穴を開けるための方便として、著者も使っていると理解すべきであろう。
なお、「享保の改革」だけでなく、「田沼の改革?」や松平定信の「寛政の改革」とその周辺状況にも多くのぺ−ジが割かれており、多くの重要な指摘がされていることを補足しておく。
暗君と名君をわけるもの
シリーズ15巻は、吉宗とその経済政策についてです。吉宗と言えば、「暴れん坊将軍」(もちろんフィクションですが)で有名ですが、世間の相場はどちらかと言えば、「名君」に偏っていると思います。
もちろん、彼が暗君であったとは言えませんが、こと経済政策については、「素人以下」であり、そこで同じ徳川家の中で、「政争」とも言える争いがあったことなどは、歴史の教科書に載っていません。そしてその経済音痴となった根本的原因に、「儒教」の教えがあることが論理的に解説されています。「儒教」にここまで負の側面があったことなど、学校では教えないはずですが、このような宗教問題を理解出来ないと、現在の政治・経済の諸問題を正しく理解出来ない事が本シリーズでは繰り返し力説されていますが、それをここまで綺麗に解説出来るのは著者だけと言っても良いのかも知れません。
仏教・神道・儒教集中講座 (徳間文庫)
井沢 元彦 徳間書店 徳間書店
世界に類例を見ない日本宗教のユニークさを知る
日本人は一般に「宗教(問題)にうとい」と言われる。それは外国の宗教に対してばかりではなく、我々日本人自身の底流にある宗教もしくは宗教的感覚・思考様式の存在についてもほとんど認識・自覚していない。これは、世界的には極めて稀有な状態なのだと、本書の著者である井沢元彦氏は言う。
では、なぜ我が国はそんな状態になっているのかと言えば、我が国では戦国時代末期の武将・織田信長によって徹底した[政教分離]が行なわれ、以後、実力を持って現実の政治に口出しする宗教団体の動きが封じられて、一般庶民が日常生活にあたって宗教に悩まされあるいは考慮する必要がなくなったためという。その意味では、今なお宗教による対立や抗争が続く世界から、400年も以前に日本を脱却させた織田信長は我が国最大級の恩人の一人である。
しかし、我々日本人が認識・自覚していなくても、我々日本人の根底には日本のユニークな宗教は厳然と存在するし、知らず知らずのうちにそれに規定されて生きている。本書は、そうして日本人のうちにある、我が国の根元的宗教とはどのようなものか? ということを、日本古来の神道、外来宗教である仏教・儒教の各々を順を追って体系的に、そして何よりもわかりやすく解説することを通じて明らかにするもので、これによって世界のいずれの地域とも異なる、日本人ないし日本社会の独自性を教えてくれる。
それによれば、我が日本社会における宗教の根幹をなすのは「和」と「穢(けが)れ」(忌避)、それに「言霊(ことだま)」に対する信仰(?)であり、これが日本人の発想や行動様式の根本を規定しているという。特に衝撃的だったのは、わが国における[反軍〜反戦]の傾向というものは、いわゆる進歩的・左翼的イデオロギーによるのではなく、「穢(けが)れ」(忌避)に基づく、軍人に対する差別的な伝統によるという貴重な指摘である。
我が国には、今日なお過去の[日本軍国主義][アジア諸国に対する侵略戦争]を口を極めて非難したり、[平和憲法の維持・擁護]や[日米安保体制の破棄]を声高に主張する反日勢力が根強く存在するが、彼らは自身が陶酔しているような進歩的・良心的(?)な存在なのではなく、単に日本宗教(日本教)の呪縛を自覚していない、もっともナイーブな種類の日本人であるに過ぎないというのは、極めてアイロニカルである。
とにかく、我々日本人は、日本人独自の信仰である日本教のユニークさを自覚していない。そこから、「日本の常識、世界の非常識」と言われるような言動の格差が生じる。今後、外交の分野でもビジネスの分野でも、不必要なトラブルや不利益に巻き込まれないためにも、本書の内容を頭に入れておく必要がある。極めて有益な著作である。
分かりやすい
すごく分かりやすく書いてあり、最初に読むには最適かと思います。
ただ、多少、独断的な箇所もあるので、中村圭志「信じない人のための<宗教>講義」みすす書房、橋爪大二郎「世界がわかる宗教社会学」筑摩書房、小室直樹「日本人のための宗教原論」徳間書店のような本を合わせて読んだ方がいいと思います。
レビュアーの方の中に、秦檜や関帝(関羽)等に関する記述の例を上げ罵倒に近いレビューを寄せておられる方がいますが、ミスリードだと思います。
私もこの方のレビューを読んで買うことをためらったことがあるのであえて指摘させていただきます。
秦檜が、金との和平策を採り、主戦派の岳飛を謀殺したため、売国奴とののしられ、岳飛廟に、岳飛の前に後ろ手縛られる形の像を置かれ、いまだに観光客に叩かれたりつばを吐きかけたりされているのは事実です。
(つばをはきかけることは禁じられたようです。)
それと、秦檜の和平策を再評価する試みとは次元の異なる話だと思います。
関帝に関する記述は、儒教のところで出てるのではなく、神道のところで出てきます。
怨霊神を日本独特のものと説明した後、関帝が怨霊神であることに触れていて、但し、例外だと言っているだけです。
筆者は、一言も、関帝を、儒教の神だとは言っていません。
蛇足ながら、関羽は儒教でも五文昌の一人「文衡聖帝」とされて神格化されています。
清の頃には、県には、必ず孔子を祭る文廟と関帝を祀る武廟を建立することが義務けられています。
各宗教が持つコアな部分とは
本書は、仏教、神道、儒教について、それぞれが持つコアな部分をわかりやすく解説した初学者向けの本です。
よってこの本に、仏教、神道、儒教の全てのディーテールが書かれているわけではありません。
それぞれの違いと、その違いが日本及び日本人に影響を与えた範囲について、大枠の部分を指し示しているだけです。
その意味では、それぞれのディーテールには、その道を専門に勉強した人から見たら足りないところ、誤っているところがあるでしょうが、本書の目的はそれ以前の、これら日本に影響を及ぼした宗教群の存在にすら気がついていない、現在の日本人に、「気づきを与える」ためのモノだろうと言う事です。
ですから、語り口も中学生もしくは高校生向けの平易なモノになっていて、だれでも2時間もあれば読み切れてしまう分量に収められています。
しかし、内容は軽視出来るものではなく、十分にコアな部分を解説している良書だと感じました。
宗教集中講座第2段。仏教・神道・儒教の中に観る日本人の宗教感の独自性と創意性
本書は、日本人が疎い自国の宗教感やその歴史を分かり易く解説してくれます。
神道は日本固有の宗教、一方、仏教と儒教は海外文化を取り入れ、日本風に改変
されているとし、一般的に知られていない史実を教えてくれます。特に、断片的にし
か知らなかった神道が日本人の思考の奥深くに根付いていることを知りました。例
えば、神道は、ヒトのみならずではなく川や木などでも、普通では見られない優れた
特性のものに神は宿り、さらに、邪な神(怨霊神他)や、元寇で日本に攻めてきて戦
死した敵兵でさえ、霊英として祭るのだと。後者は私にとっての驚きの新事実でした。
姉妹書のユダヤ・キリスト・イスラム集中講座と合わせて、本書を読むと、各民族
の宗教感を通して、日本人の価値観を見つめ直すきっかけになると思います。
宗教の勉強のとっかかりとして
1時間半ぐらいで読むことができました。宗教についてあまり学ぶ機会のない人がとっかかりとして読むにはいい本だと思います。
仏教の部では、「往生」と「成仏」の違いや、鎌倉仏教のそれぞれの特徴、信長の比叡山焼き討ちの意義など、初心者にとって興味深い話が紹介されています。
神道の部では、怨霊神の代表は菅原道真(天神さま)であり、邪神が祭られるのは「なだめることによって穢れを取り除き、清らかな善神に変えていこうと考える」からという話が出てきます。また言霊信仰が論争下手を作り出していることや、聖徳太子が一番大切にした「和」という思想は神道の考えであることなどが紹介されています。いずれもまめ知識として使えますし、最後まで退屈しない講座となっている点でお勧めできます。
井沢式「日本史入門」講座〈2〉万世一系/日本建国の秘密の巻
井沢 元彦 徳間書店 徳間書店
面白い!!
このシリーズは、面白いですね。
今回の「万世一系/日本建国の秘密の巻き」は、天皇家のことを中心に話が進んでいきます。
とても解りやすく面白かったです。
謚号についての追求はとても感心させられました。
取り上げられている森鴎外の「帝謚号」の現代日本語訳が出たら読んでみたいです。
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