しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)
泡坂 妻夫 新潮社 新潮社
心憎い奴ヨギガンジー
各レビューにサッと目を通してから購入しましたが、なるほどこれは驚きました。一発ネタもここまでアクロバティックなら清々しく、作者や編者が楽しみながら作っていった様子が目に浮かびます。読者をこれだけ驚かせたのだから苦労も報われたことでしょう。手に取った時は「しあわせの書」というタイトルにしても、表紙のヨギガンジーの面構えにしても、売る気ゼロとしか思えませんでしたが、読後はどちらもしっくりくるんですよね。心憎いです。
苦労しただろうなあ
噂に聞いていた本書だが、少し過大評価されている気がしないではない。決しておもしろくないわけではないが。
実際私はここの書評を読んで大いに期待して読んだが、事前にハードルがあがりすぎていたような気がする。
ただ非常に苦労した作品だとゆうのは伝わる。筆者も編集者も。
筆者はマジシャンでもあるが、彼らが華麗に見えるマジックの裏で、地味な仕込み作業をしている姿が見えてきそうな作品だった。
ミステリーだが実は小説ではない
確かに凄い。作者は書くのにものすごい苦労しただろう。だが、ヒントを出し過ぎだと
思う。裏表紙の説明に「41字詰15行組み」って書いたらダメだろ。こういうのは書籍内
では一切ヒントを出さず、読後も半数の読者が気付かず、しばらくして口コミで仕掛けが
評判になるというのが正しい戦略だろう。それにしても、ストーリー自体が面白くないのは
痛い。一応、ミステリー小説なんだからプロットで勝負してほしかった。まあ、ストーリー
より優先させるものがあるのは判るんだけど。
売れて欲しいような、売れて欲しくないような複雑な気持ち
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、これとほぼ同様なものが専門ショップでは安くても九千数百円掛かります。
テレビ番組で某有名そちらの職業の方が良くできた本だと紹介されていました。
良書なので話題になれば嬉しいのですが、売れてこの本の価値が広まると秘密な部分も広がってしまいますね。
複雑な心境です…。
すばらしい。420円は安すぎる(笑)
この手のものをマジックグッズとして販売したら、どんなに安く見積もっても8000円はくだらない。数万円しても不思議ではない。マジックグッズというのはそう言うモノ。それが420円とは……さすが、としか言いようがない。マジシャン兼推理作家だからできたことであって、世界中のどのマジシャンにも絶対になし得なかった作品。
織姫かえる―宝引の辰捕者帳
泡坂 妻夫 文藝春秋 文藝春秋
生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)
泡坂 妻夫 新潮社 新潮社
二冊買うのをお薦めしたいです
前作「しあわせの書」で赤字と言えるほど執筆が困難だったためか、今回は読者に二冊買わせようとする手段に出たのかも。
と、思ってしまうほどによくできています。ネタバレになるため詳しくは書きませんが。
自分は二冊買って比較しながら読み、その手法を楽しみましたが、他の方も同じ方法での読書をお薦めしたくなるような一冊です。
奇術探偵曾我佳城全集
泡坂 妻夫 講談社 講談社
泡坂ワールド
泡坂妻夫の面目躍如といった一冊。亜愛一郎ものにも通じるような独特のロジックの展開も大変好みでした。しかしラストがもう一ついただけなかったので、星一つ減点。好みの分かれるところでしょうが・・・。
奇術ファンにオススメ!
この書は、「謎」好きのあなたにオススメする。
短編集のため、「謎」に飽きることがない。「謎」めく女にも惹かれる。まさに「謎」に満ちた1冊。
古典の奇術を知るもよし、作者への興味で読むもよし、
ファンならずともオススメしたい!
曾我佳城にふさわしい幕切れです
待望の曾我佳城全集。著者が20年の時をかけて書き紡いだ、
ファン垂涎の名作が全集として出版されました。元マジシャン、現在は豊富な財力を生かして、マジシャンの卵たちの
パトロエンヌとして活躍(?)する、美貌の未亡人「曾我佳城」。
彼女の周囲では、何故か不思議な事件が起こるのですが…
その謎を、鮮やかに解き明かします。
アマチュアマジシャンとして、トリッキーな作品を作ること、
また、人情味あふれる、しみじみとした物語を作ることでも知られる、泡坂妻夫。その作者が、20年かけて仕掛けた大仕掛け。
1本、1本の短編を楽しませつつ、大仕掛けは、
着々と完成に近づきます。鮮やかに読者を魅惑し、フィナーレ。
若くしてすっぱりと奇術師としての人生を捨てた、曾我佳城にふさわしい幕切れです。
読めば佳城女史ファンに、そして長い余韻が残る本
高い重い本で買うのをためらいましたが、『奇術』のタネにつられて思い切って買ってしましました。推理小説としては、玉石混合の短編集ですが、読み進むにつれて、佳城ファンになっていきます。そして、最終話で....最初からもういちどページをめくり直して.....
推理小説は、読み終わるとさっと忘れてしまうのが常ですが、何故か、読後かなりの日数を経ても余韻が残り忘れられない物語です。宝物を買った気がしました。
亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)
泡坂 妻夫 東京創元社 東京創元社
「非常識」を見抜く、無垢にして透徹したまなざし
◆第一話「DL2号機事件」
爆破予告された飛行機に、あえて乗る男の真意は?
「常識」に安住することの危うさ。
「常識」が非常識に反転する構造が描かれます。
◆第四話「掌上の黄金仮面」
巨大弥勒菩薩像の手の上に立つ怪人―。
乱歩テイスト溢れる舞台設定は、
決してこけおどしではありません。
この状況だからこそ犯行に至ってしまった犯人の
心理の形成過程が無理なく説得的に描かれています。
◆第五話「G線上の鼬」
市道G号線で、タクシー強盗が殺害された事件。
強盗を「鼬みたいに陰険〜」と表現したタクシー運転手。
なぜ「狐みたいに」ではないのか?
不可解にみえて、実は単純な
人間心理の機微が暴かれる、集中の白眉。
◆第七話「ホロボの神」
戦時中、南アジアの小島ホロボで原住民の
酋長が日本兵の拳銃を使って自殺した。
しかし、はたして彼らに「自殺」という概念があるのか?
異なる文明の邂逅によって生み出される密室状況と、
犯人の犯行動機の設定の見事さに舌を巻きます。
◆第八話「黒い霧」
早朝の商店街にばら撒かれた大量のカーボン。
スケールの大きなトリックの必然性が説得的に解明されると
同時に、亜によって、見事な犯人限定の論理が展開されます。
冒頭と結末が美しく円環を結ぶかのように収束する佳編。
納得の高評価
日本の探偵名鑑の最初に名前が載る(50音順)男、亜愛一郎のキャラクター
が抜群に良いです。見た目と中身のギャップの大きさは、京極夏彦が描く榎津
に勝るとも劣らないものです。
本書は、キャラクターに負けないくらい謎解きが面白いので、是非読んでみて
下さい。笑いどころもたくさんあります。
どの作品もかなり良いのでお勧めを挙げるのは難しいですが、「掌上の黄金仮面」
「黒い霧」が気に入りました。
推理小説を読みたいときに
探偵役が、出てきた事実のなかから、事件の真相を推理する。
そんな正当な推理小説が短編で8つ載っています。
文章が美しく、出来事には無理がなく、「なるほど、これが伏線だったんだ!」とどのお話でも感心させられました。
「このトリックを短編で使っちゃうなんて贅沢」と思う面白さでした。
私が一番面白かったのは気球を使った殺人事件のトリックでした。
でも、どれも甲乙つけがたいです。
続きものではありませんので、気に入ったところから拾い読みも出来、気軽に読むことができる本です。
こんな、面白い本があるなんて知らなかったので読めてうれしいです。
トリック・キャラクターともに良質
図書館を利用して借りたがあまりに面白いので買ってしまった。
やっぱり主人公が魅力的である。
また他のキャラクターもしっかりと性格が書かれているので、短編集といえども愛すべき登場人物が満載だ。
トリックの方はメンタル面から攻めるものが多いが、パズルのように細かな仕掛けが綺麗に組みあわさる推理は見事。笑いどころも充分だ。
本著では「掘出された童話」が特に気に入った。
文字通りトリッキーな一冊。棚にそろえて損はない。
登場したと思ったら終わりなのは、残念!!
気弱なカメラマンだが事件が起こればたちまちにして解決してしまう、謎の青年・亜愛一郎(ア・アイイチロウ)。虫だの珍しい雲だのばかり撮っている地味地味カメラマンだが、カメラマンのくせにファッションは常にパリッとした一流品で恐ろしく美形。そして格闘になれば何故かバカ強く、一体どこの誰なのかもわからない。そんな彼が活躍する短編集の第一弾。
魅力的なキャラクターだが残念なことにこの「狼狽」、「転倒」そして最終作「逃亡」の三部作で終了。
「逃亡」最後では愛一郎は実は○○の××だったことが明かされ、遂には△△に・・・(書けないのが残念です!)。う~ん、こんな終わり方をするシリーズは多分世界でも唯一でしょう。
マジックにも詳しい作者の見事なトリックに脱帽。
地味㡊¨!いうべきかシンプルというべきか、私にはどれも十分満足できる短編だった。
亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)
泡坂 妻夫 東京創元社 東京創元社
家の〈消失〉と死体の〈出現〉
◆第一話「藁の猫」
完璧な写実性で有名な画家の内縁の妻が服毒死した。
そして、なぜか遺体の手には藁の猫が握られていて…。
前作『狼狽』の「DL2号機事件」と同じテーマが変奏されます。
◆第二話「砂蛾家の消失」
(人家消失)という大ネタですが、
仕掛け自体は至ってシンプル。
動機の必然性の演出が見事です。
◆第三話「珠洲子の装い」
飛行機事故で死んだ流行歌手の名を冠した
映画のオーディションでの出来事。
これぞ逆説、という論理が冴えわたります。
◆第四話「意外な遺骸」
手毬歌に見立てられた他殺死体の謎。
死体の死因がとにかくユニーク。
廻文のお遊びも楽しいです。
◆第五話「ねじれた帽子」
落とした帽子を頑として受け取らない男の謎。
冒頭、無造作に示される伏線が、とにかく洒落ています。
◆第六話「争う四巨頭」
第一線を退いた、同郷の政財界の大物4人。
人目を避けて、彼らが会合するのはなぜなのか?
「知」の喜びや、それまで気づかなかった自分の
嗜好を知ることこそ、人生の醍醐味でしょう。
◆第七話「三郎町路上」
タクシーの後部座席に突然出現した死体の謎。
昆虫学者・響子の姐御っぷりが忘れがたい印象を残します。
◆第八話「病人に刃物」
「転倒」がキーワード。
誰の身にも起き得る危険ですが、
最終的には因果応報というところ。
作中の、勘違いコント風の会話に、現代でも
決して色褪せない著者の洒脱さを感じます。
砂蛾家 やっぱりおもしろい!
とある推理漫画でトリックだけぱくられていました。
しょうがないかもなあ、面白いもん。
世界遺産白川郷・五箇山に行くときは是非カバンの中に一冊。
一つ一つの情景描写も、後で見直してまた納得、のお話です。
実際に白川郷で合掌住居に泊めてもらった夜も、素晴しい木組みや、
美しい秋の防災訓練の写真を見ながら、この作品を思い出さずにおられませんでした。
トリックの本家はこの作品ですよ、あくまでも。
ショウキョウホウセンカの種子
心理トリックをつかった短編が8つ収められた、素敵な推理小説の本です。
短い話のなかに、ちゃんと伏線がちりばめられていて、筋道立った解決に
「うーん、さすがだ」
と何回もつぶやいていました。
無理がないきれいなトリックを披露してくれるお話ばかりでとっても面白いです。
どれも面白かったのですがとくに、
「砂蛾家の消失」
のホウセンカの種子の伏線に
「やられた!」
と思いました。
転ぶ亜愛一郎。
一夜にして忽然と消えてしまった家…、手鞠歌の通りに、撃たれ、煮られ、焼かれていた死体…、探偵役である亜愛一郎はもちろんですが、事件の謎の方もとても魅力的な作品です。 さらにシリーズを通して文章のいたる所で思わずニヤリとしてしまう作者の泡坂妻夫氏の遊び心もこのシリーズの楽しいところです。巧みな言葉遊びや、再読してみて初めて気付くような些細な法則?めいたもの、あれ?と思わず前の作品を読み返したくなる登場人物(笑)などが各作品にさり気なく紛れていて、これを見つけるのもこのシリーズの一つの愉しみだったりします。もう20年以上も前の作品なのですが、初めて読んだ時、そんなに昔の作品であった事に驚かされました。
個人的には「転倒」が一番好きなのでレビューに書きましたが、三部作どれも良作、名作揃いのシリーズです。「逃亡」に収録されている「歯痛の思い出」なんかも面白いですよ!
第二弾です!
気弱なカメラマンだが事件が起こればたちまちにして解決してしまう、謎の青年・亜愛一郎(ア・アイイチロウ)。虫だの珍しい雲だのばかり撮っている地味地味カメラマンだが、カメラマンのくせにファッションは常にパリッとした一流品で恐ろしく美形。そして格闘になれば何故かバカ強く、一体どこの誰なのかもわからない。
魅力的なキャラクターだが残念なことに「狼狽」、この「転倒」そして最終作「逃亡」の三部作で終了。
「逃亡」最後では愛一郎は実は○○の××だったことが明かされ、遂には△△に・・・(書けないのが残念です!)。う~ん、こんな終わり方をするシリーズは多分世界でも唯一でしょう。
マジックにも詳しい作者の見事なトリックに脱帽。
ヨギガンジーの妖術 (新潮文庫)
泡坂 妻夫 新潮社 新潮社
悪魔の智慧ではなく、人間の方法
◆「ヨギガンジーの予言」
勝島家の前で行き倒れになっていた老人・車契は、数日置きに、
三つの予言をし、その度ごとにそれを封筒に入れて手渡し、去っていた。
のちに開封し、内容を確認すると第一、二の予言は的中。
第三の予言の実現を恐れた勝島家の人々はこぞって家から避難したのだが……。
マジックにおける「ワン・アヘッド・システム」(ひとつずらしで後出しをし、いちばん
最後のものを頭に持ってきて順番を合わせる)が用いられているのですが、
それに加え、著者オリジナルのトリックが組み込まれているのがミソ。
煙の殺意 (創元推理文庫)
泡坂 妻夫 東京創元社 東京創元社
紅葉の山に雪を訪ねる
◆「椛山訪雪図」
▼あらすじ
美術品蒐集家の家に強盗が入り、お手伝いの
女性が殺され、二幅の軸が盗まれた。
そのうちの一つは北斎の雪山図だったのだが、
なぜか後に書庫で発見される。
その代わり、雪山図と構図や、人物・風物の配置を
同じくする「椛山訪雪図」が紛失していて……。
▼感想
「椛山訪雪図」の「紅葉の山に雪を訪ねる」
という画題に秘められた二重の意味とは?
そして、蒐集家が呟くように口にする其角の
「闇の夜は吉原ばかり月夜哉」に込められた感慨とは?
芸術の趣向と、現実の強盗殺害事件の構造が
二重写しに読者の眼前に示される謎解きの瞬間は、
まさに著者の真骨頂です。
軽妙にして洒脱な話運びと、にじみ出る教養。
著者の数ある短篇のなかでも、
頂点といっても過言ではない傑作です。
名品「椛山訪雪図」が、格別、素晴らしい。
落語の名人が語る噺の旨味と、トリッキーな仕掛けの妙が味わえるミステリー短編集です。
抑制の利いた文章のたたずまい。
さり気ない話の伏線が、後でとんでもない絵柄となって現れる騙し絵の構図。
上質のミステリーを読み、味わい、楽しむひとときを満喫しましたよ。
収録された八つの短編のなかでも、直木賞候補作となった「椛山訪雪図」、花見の季節の公園を舞台にした「紳士の園」、殺人事件の現場でデパート火災を中継したテレビを見ながら事の真相に至る刑事の話「煙の殺意」の三編の出来映えが素晴らしく、これは!と唸らされました。
とりわけ、「椛山訪雪図」の話の風情が素晴らしい。読むのは今回が三度目くらいになるのかな。しみじみ、このミステリーは良いなあと魅了されました。
今まで読んだ国内ミステリー短編のなかでも、私の中では三本の指に入る名品。未読の方には、ぜひ一度ご賞味くださいとお薦めいたします。
キレの良い短編集
江戸時代の画家の描いた絵に隠された謎を解き明かす名作「椛山訪雪図」、行儀の良い人ばかりの集まる公園の秘密「紳士の園」、完全に見えた殺人計画が思わぬところからバレてしまう「歯と胴」など、毛色の変わった謎を推理によって思いもよらない解決をみせる、といった短編のお手本のようながら、それでいて著者にしかまず書けないようなミステリ8編が収められた短編集。
中には、都合が良すぎる、推理が飛躍しすぎというところもあるのですが、語り口が絶妙で、読んでいる最中には全然気になりません。
発表が1976~80年にかけてと、一昔前の短編ばかりなのですが、今読んでもとても新鮮、キレの良さがすばらしい。読んで損のない短編集です。
11枚のとらんぷ (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
泡坂 妻夫 東京創元社 東京創元社
マジキ クラブ
魔術のようなオドロオドロしい雰囲気はなく、読んでいると
「私も奇術をひとつおぼえたいな」
と思ってくるお話でした。
作中に挿入された短編集が非常に面白く、全ての奇術の種が最後に出てきて
「うーん、なるほど」
とうならせられるものばかりでした。
種やしかけのあるマジックがたくさん出てきて、それも楽しい推理小説でした。
さすが本職マジシャン
奇術師ならではの一風変わった作品です。
メタミステリーの手法を取り入れながら、本格として見事に成立しているのですが、
やはり奇術師ならではのトリックのネタばらしが楽しい。
全体的にコミカルに仕上がっているので、肩肘張らずに楽しんで読めます。
読み終わってみれば伏線の宝庫。謎解きにチャレンジしたい方は、作中作「11枚
のとらんぷ」はようく読みましょう。
気持ち良く騙される快感
作者が奇術師としても有名なのは有名ですが、これは正に奇術の世界(アマチュアではありますが)を舞台にした作品。
最大の読み所は、作中作である短編集『11枚のとらんぷ』。これが素晴らしい。この部分だけ抜き取っても一級のミステリ作品なのです。更にその内容が現実世界の事件解決に結び付いて行くという趣向なのですが、そんな事は取り敢えずどうでもよくなって、この短編集に没入してしまう事請け合い。そしてハッと気が付いた頃に本編の解決編がやって来ます。勿論本筋も秀逸ですよ、念の為。
奇術探偵曾我佳城全集 秘の巻 (講談社文庫)
泡坂 妻夫 講談社 講談社
佳城ファンのみが楽しめる作品
本職のマジシャンでもある作者が、元花形女性奇術師、曾我佳城を探偵役として様々な人生模様を綴った短編集。勿論、事件を扱ってはいるのだが、ミステリと言うよりは男女の機微を中心とした心模様を描きながら、佳城が彩りを添えると言う形式である。作品には色々な形で佳城が登場する。全集と言う性格上仕方が無いのかもしれないが、雑誌への掲載順と収録順が異なるので、佳城の境遇が一貫しておらず読む者を混乱させる。
作品の出来としては冒頭の「空中朝顔」のように事件が起こらない物の方が良い。上述したように男女の機微に花作りと言う艶やかさが加わり、更にそれに佳城が華を添えるというシャレた創りである。一方、私が期待した奇術を応用したミステリの方は出来が悪く興醒めである。佳城の推理力を強調する余り、死体移動に警察が気付かないとか、奇術師が本物の銃弾を使うとか、指輪を咥えて飛んで行ったカモメが偶然船に舞い降りるとか無茶が多過ぎる。奇術のネタを巧みにミステリのトリックに昇華する手腕に欠けている。その癖、マジックに関する作者の知識をひけらかすので読む方はウンザリである。読む方は、元花形女性奇術師が探偵役を務めるのだから、さぞかし華麗なミステリ・ショーが展開されると思って期待するのは当然で、それが完全に裏切られる。本全集は本巻と「戯の巻」の二部構成だが、両方とも同様の出来である。
結局、佳城の魅力に頼り切ってしまって、肝心なミステリとしての面白さにまで気が回らなかった残念な作品。佳城ファンのみが楽しめる作品と言って良いだろう。
佳城ものの集大成
20年にわたって書き継がれてきた短編を集大成した貴重な本。しかももう続編は書かれないからこれがほんとの全集。泡坂妻夫の短編のうまさは定評があるが、このシリーズでは主人公の佳城の登場の仕方にも工夫がされ、決してワンパターンになっていないところがいい。各編の配列が執筆順になっていないのだが、最初から順に読んでも違和感はない。というか順序通りに読むことをおすすめする。
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